2015年 11月 17日
商標 平成26年(ワ)第3179号 中古車くるまの110番事件 (大阪高裁平成27年(ネ)3285号) |
◆中古車関連会社の商標の類似が争われた事件。地裁では非類似と判断されたが、高裁では類似と判断。
【商標の類似、結合商標、一部抽出、強支配的印象部分/識別力ない部分、商標的使用、商標法26条1項3号、6号、サンエス自動車、コルハート、ホームページ、名刺】
◆大阪地裁 平成26年(ワ)3179号 ☞ 非類似
(類否判断)
「原告商標と被告標章の類否について
ア 原告商標1の読み仮名による称呼は「くるまのひゃくとーばん」であり,被告標章の称呼は「くるまひゃくとーばん」であるから,ほぼ同一である。しかし,その外観は,原告商標1では,「中古車の110番」が強く支配的な印象を与えるのに対し,被告標章では「車110番」であり,相違する。また,観念も,原告商標1では,「中古車についての緊急連絡先・相談窓口」であるのに対し,被告標章では,「自動車の緊急連絡先・相談窓口」であり,前記のとおり,「中古車」が,一度購入されたが再び売りに出された自動車と理解されることからすると,観念も異なる。そして,ほぼ同一である称呼も,原告商標1で強く支配的な印象を与える「中古車の110番」についての自然でない読み仮名によって初めて生じるものであり,それにより「車の110番」を想起するわけでもないことからすると,原告商標1では,「中古車の110番」との外観とそれに伴う「中古車についての緊急連絡先・相談窓口」との観念が,上記の読み仮名による「くるまのひゃくとーばん」の称呼による印象を凌駕し,役務の出所を誤認混同するおそれがあるとは認められないから,原告商標1は,被告標章と類似するとはいえない。」
(大阪地裁26部 高松裁判長、平成27年10月15日)
(類否判断)
「ア 原告商標1と被告標章の類否
外観は,原告商標1のうち強く支配的な印象を与える部分の1つである「110番」と被告標章の「110番」がほぼ同じであるが,原告商標1の「中古車」と被告標章の「車」の部分は相違している。称呼については,原告商標1の一次的な称呼である「くるまのひゃくとーばん」と被告標章の称呼である「くるまひゃくとーばん」はほぼ同じである。観念は,原告商標1では「中古車についての緊急連絡先・相談窓口」であるのに対し,被告標章では「自動車の緊急連絡先・相談窓口」であり,相違している。
商標の類否は,前記のとおり,同一又は類似する役務について使用されていることを前提に判断すべきところ,原告商標1と被告標章の類似性判断の前提となる原告商標1の指定役務のうち「自動車の修理又は整備」の役務に関してみると,その対象となるのは,一度使用に供された自動車である「中古車」であることが多く,被告標章が使用された同役務に関する業務も「中古車」を対象としているものと推認されることからすると,「中古車」と「中古車」及びその対義語である「新車」を包含する上位概念である「車」「自動車」との区別がさほど重視されるとは考えられない(一般の商取引において「中古車」と「新車」の区別が重視されるのは販売・買取りの場面であることが多い。)。したがって,原告商標1から生じる観念と被告標章から生じる観念の相違は著しいということはできない。
そうすると,原告商標1の一次的な称呼と被告標章の称呼はほぼ同じであり,観念は著しく相違しているとはいえないし,被控訴人らによる被告標章の使用が何ら役務の出所を誤認混同させるおそれが認められないものであるといえる取引の実情等は認められないから,原告商標1と被告標章の外観の相違を考慮しても,原告商標1と被告標章は類似しているというべきである。」
(大阪高裁8部 山田裁判長、平成28年4月8日)
◆Memo:
(1)外観/称呼/観念 → 一致点相違点 → 観念の相違点…「中古車」or「自動車」の観念相違が著しくないことを認定 → 総合判断。
(2)『車110番』は宣伝文句的orキャッチフレーズ的な使用であり役務出所標識になるようなものでない(商標的使用でない)との主張認められる?
→ 「自動車点検整備業務等において,「車110番」の表示が被控訴人らが主張するような意味で一般的に用いられているとは認められない…」@高裁
(2015.11.18 弁理士 鈴木学)
(2016.7.1. 追記)
by manabu16779
| 2015-11-17 21:16
| 商標
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