2016年 01月 05日
意匠 東京地裁平成26(ワ)1459号/知財高裁平成28年(ネ)10001号 シラヤマvs.ダイクレ事件 |
◆意匠権及び特許権に係る侵害訴訟で特許権侵害のみ侵害成立と判断された事件。 「道路橋道路幅員拡張用張出し材」の 意匠については非類似と判断。
◆Memo ・特許権侵害は成立→損害賠償額は特許法102条2項に基づき約795万円と算定。 ・見えなくなる部分の要部としての評価 (2016.1.5. 弁理士 鈴木学) (2016.7.19. 追記)
【中間判決、特許、意匠、意匠の類似、損害賠償、§102②】
◆東京地裁(第一審)平成26(ワ)1459号
(意匠の類否判断)
「 本件意匠の要部(前面側の舗装層によって隠れない部分)において特徴的なのは,前面側ボルトが,上下に2つ並び,上側と下側のそれぞれにおいて,上下方向の位置が一致するように設けられており,左右方向両端から端に位置する前面側ボルトまでの間隔と前面側ボルト同士の間隔が,1:2になっていることであるといえる。
イ 他方,被告意匠1及び2の前面側には,底面側に近い位置に,1列の前面側ボルトが設けられているが(具体的構成態様ウ),これは施工後に露出する部分ではない(甲7,11,13,乙1,21)ため,施工後の前面側はボルト等の突起物のない状態となる。 すなわち,別紙要部(前面側)の比較図(但し,「乃至4」とある部分を削除する。)記載のとおり,本件意匠においては,施工後においても,前面側ボルトが上下方向の位置が一致するように上下に2つずつ等間隔に整然と並んでいる点が特徴的で,本件意匠自体からも前面側ボルトが強い印象を受けるが,被告意匠においては,前面側ボルトが施工後は視認できない位置にあり,この印象の差違は大きい。
なお,被告意匠3(1)及び同(2)の前面側の構成については前記1記載のとおり細部が不明というほかないから,要部が共通するとはいえない上,被告意匠3(1)及び同(2)に基づいて実際に施工された被告意匠2の前面側の構成は上記のとおりであって,本件意匠とは要部に大きな差違があるのであるから,結局,被告意匠3(1)及び同(2)についても,被告意匠1及び同2と同様に,要部に大きな差違があるというべきである。 」
◆知財高裁(控訴審)平成28年(ネ)10001号
(要部・類否判断について)
「(2) 本件意匠の要部
ア 登録意匠と対比すべき相手方の意匠とが類似であるか否かの判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行う(意匠法24条2項)ものとさ
れており,意匠を全体として観察することを要するが,この場合,意匠に係る物品の性質,用途及び使用態様,並びに公知意匠にはない新規な創作部分の存否等を参酌して,取引者・需要者の最も注意を惹きやすい部分を意匠の要部として把握し,登録意匠と相手方意匠とが,意匠の要部において構成態様を共通にしているか否かを重視して,観察を行うべきである。
…(略)…
以上からすれば,本件意匠の構成のうち,要部は,道路橋の利用者から注目される前面側の舗装層によって隠れない部分であるといえ,また,背面側及び底面側のうち,施工後も公衆から見える部分も,ある程度取引者・需要者の注意を惹くといえる。しかし,基本的構成態様(正面視左右方向に長く,長手方向に中空の直方体(中空筒体)を有し,中空筒体の正面側の面(前面側)の外方に向けて底面側の面(底面側)が全面にわたって延伸して延伸部が形成され,底版部(底面側と延伸部からなる)の下面に,その左右方向の全面にわたって下方に延びる四角板状体(腹板)が形成され,中空筒体の背面側の面(背面側)の下の底面側の下面から,腹板の最低位までを直線状につなぐ三角板状体(リブ)が左右方向に複数形成されている。)自体は,施工後に見えなくなる部分が含まれる以上,要部であるといえない。 」
(平成28年7月13日判決言渡 )
by manabu16779
| 2016-01-05 18:57
| 意匠
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