2016年 01月 06日
特許 平成26(ワ)10848 日東紡績vs.ユニチカ 不燃性シート事件 |
◆不燃性シートに関し特許権侵害が争われた事件。進歩性欠如や記載要件違反を理由に権利行使が制限(§104の3)され、また、訂正の再抗弁も認められず 侵害不成立。(日東紡績vs.ユニチカ)
◆Memo
【新規性、進歩性、記載要件、特許無効の抗弁、特104条の3、訂正要件(実質的拡張変更)、訂正の再抗弁、測定方法】
☞ ガラス組成物の屈折率測定は方法がいつくかあるので明細書で特定されていない場合には記載不備(§36⑥2)となるおそれがある。
「(a)一般に,ガラス組成物やプラスチック等の屈折率の測定方法として,①最小偏角法…②焦点移動による方法…③浸液法…④臨界角法…⑤Vブロック法…などがあること,(b) 測定方法が異なれば測定値も異なる数字になる(例えば,同じ試料であっても,A法によるか,B法によるかによって,測定値は異なる数字となる。)ことがあり,(c) 同じガラス組成物について,Vブロック法による測定値が浸液法(B法)による測定値と比べて最大で+0.0077になることもあること,(d) 上記(a),(b)の事実は本件各出願当時から知られていたことが認められる。 」
「ところが,本件各特許の特許請求の範囲の記載では,屈折率の測定方法が特定されていないし,また,本件各明細書における発明の詳細な説明にも,ガラス組成物の屈折率の測定方法は記載されていない。
そうすると,本件各発明における「ガラス繊維を構成するガラス組成物」の「屈折率」は,いかなる測定方法による屈折率であるかが不明であり,測定値を一義的に定めることができないから,その内容が特定されているとはいえない。
したがって,「ガラス繊維を構成するガラス組成物と硬化樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.02以下」という構成要件(1E・2E)は,その範囲を具体的に特定することができず,明確性を欠くものといわざるを得ない。 」
☞ 特許法§36⑥2における"独占権予測可能性"の観点
「そうすると,…本件各発明については,屈折率の差及びアッベ数の差が一義的に特定されず,ひいては,本件各特許の特許請求の範囲の記載を読む者において,本件各明細書の記載を参酌しても,当該発明の内容を明確に理解することができず,権利者がどの範囲において独占権を有するのかについて予測可能性を奪うおそれがあるものとなっているというほかはない。」
(東京地裁29部 嶋末裁判長)
◆Memo
・屈折率をクレームに記載する際には測定方法の特定に注意。
・Cf. 屈折率測定…JIS K-7142
(2016.1.6. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-01-06 19:40
| 特許裁判例
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