2016年 01月 08日
著作 平成27(ワ)6058 JAXA宇宙船イラスト事件 |
◆イラストレータが原図に対して若干の修正を行って作成したイラストをJAXAがポスター展示した行為について 著作権侵害に該当するか否かが争われた事件。
(規範部分)
【著作権、イラスト、複製権、著作物性、二次的創作の幅、小学館】
◆東京地裁 平成27(ワ)6058号
「 以上のとおり,本件イラストとNALシステム構成図との相違点は,いずれも,NALシステム構成図に新たな創作的な表現を付与するものとは認められない。
(5) 以上によれば,本件イラストは,既存の著作物であるNALシステム構成図に依拠し,その具体的表現に若干の修正,増減,変更等が加えられているものの,これにより新たに思想又は感情が創作的に表現されたものではなく,既存の著作物であるNALシステム構成図と実質的に同一のものというべきであるから,NALシステム構成図の複製物であると認められ,NALシステム構成図から別途独立した著作物であるとも,NALシステム構成図を原著作物とする二次的著作物であるとも認められない。 」
「 著作権法による保護の対象となる著作物は,「思想又は感情を創作的に表現したもの」であることを要する(著作権法2条1項1号)。ここで「創作的に表現した」というためには,当該成果物が,厳密な意味で独創性が発揮されていることは必要でなく,作成者の個性が表れたものであれば足りるというべきであるが,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的表現に修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表現することなく,既存の著作物と実質的に同一のものを作成したにすぎないものは,既存の著作物の複製物であって,作成者の個性が発揮されたものとはいえないから,創作的な表現とは認められない。 」
◆Memo
・オリジナルに多少の修正を加えていても実質同一の範囲であれば二次的著作物とならず、二次的利用者に権利は生じない。
◆知財高裁 平成28年(ネ)10005号…著作物性認めず
(各相違点について創作的表現でないとして著作物性を否定)
「… (カ) 相違点⑦(タンク部に複数のボルトが描かれていること)について
タンク部の構造として,ボルトを描くのは,ありふれた表現といわざるを得ず,本イラストの作成者の個性が発揮されたものとは認められない。
(キ) 相違点⑧(機体後部において写り込み表現が用いられていること)について
機体後部における写り込み表現は,面積的に,本件イラスト全体に占める割合が小さく,本件イラスト全体に大きな影響を与えていない。また,立体感や素材感を表現するために,写り込み表現を用いることは,ありふれた表現といわざるを得ず,この点をもって,本件イラストの作成者の創作的表現がされているものとは認められない。… 」
(知財高裁2部清水裁判長、平成28年6月27日)
(2016.1.7. 弁理士 鈴木学)
(2016.7.1. 追記)
by manabu16779
| 2016-01-08 00:22
| 著作権法
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