2016年 01月 29日
著作 平成27(ワ)15005 怪獣ウルトラ図鑑事件 |
◆怪獣ウルトラ図鑑に使用されたイラストについて使用許諾の有無や氏名表示権侵害が争点となった事件。非侵害。
【氏名表示権、著作権法19条、錯誤無効、民法95条、動機の錯誤】
◆東京地裁 平成27(ワ)15005号
・氏名表示権侵害(著§19)について
「上記事実関係によれば,本件イラストは,原告以外の者が作成したイラスト及び記述した文書と共に本件書籍の一部を構成するにとどまるのであって,復刻版である本件書籍の元となった原書籍の作成に当たり,その素材として,既に雑誌に発表されていた原告作成のイラストが使用されたものとみることができる。そうすると,本件書籍のような複数の者のイラストが掲載されている書籍において,その作成者の氏名をイラストごとに個別に表示することを省略し,これを特定のページにおいてまとめて表示することが公正な慣行に反するということはできず,氏名表示権を侵害することはないと判断するのが相当である。 」
・錯誤無効(民§95)について
「 原告は,また,仮に許諾があったと認められるとしても錯誤がある旨主張する。そこで判断するに,この点に関する原告の主張は,本件イラストの掲載に当たり原告名が表示されていないことが分かっていれば許諾をしなかったなどというものであって,意思表示の動機に錯誤があった旨の主張と解される。ところが,本件の関係各証拠上,上記の動機が表示されていたことはうかがわれないから,原告の主張は失当と解すべきである。 」
(東京地裁46部 長谷川裁判長)
◆知財高裁 平成28年(ネ)10019号
・控訴棄却
(氏名表示権について抜粋)
「 (2) 氏名表示権侵害の有無
本件書籍における氏名表示の方法は,2ページの目次の左側に「さし絵」と記載した欄があり,そこに控訴人を含む6名の氏名を列記するというものであるところ, 控訴人は,本件書籍におけるように,イラストごとに著作者名を表示するのではなく,特定のページにその氏名をまとめて表示した場合,どのイラストを誰が描いたのか全く分からないから,このような方法は,著作権法19条が氏名表示権を規定する趣旨を没却するものであり,許されない旨主張する。
しかし,前記(1)認定のとおり,①本件書籍がテレビ番組に登場する主人公,武器,怪獣等を専ら子供向けに紹介する図鑑であり,本文を構成する約170ページのほとんどのページに大なり小なりイラスト又は写真が掲載されていること,②本件書籍の原書籍においても,本件書籍におけるのと同様の表示がされていたことに加え,証拠(乙7,乙9~13)によれば,単行本として発行される図鑑や事典において,そこに含まれるイラストの著作者が複数いる場合,イラストごとにそれに対応する作成者の氏名を表示せず,冒頭や末尾に一括して作成者の氏名を表示することも一般的に行われていると認められることに照らせば,本件書籍の内容や体裁において,イラストごとにそれに対応する作成者の氏名が表示されていなければ氏名表示がされたことにならないとまでいうことはできず,本件書籍における氏名表示の方法が,公正な慣行に反し,控訴人の本件イラストに係る氏名表示権を侵害するものであるということはできない。 」
(知財高裁4部高部裁判長、平成28年6月29日)
◆Memo
・氏名表示権…公正な慣行といえるかどうか。
(2016.1.29. 弁理士 鈴木学)
(2016.6.30. 追記)
by manabu16779
| 2016-01-29 12:20
| 著作権法
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