2016年 01月 29日
意匠 平成27(ネ)10077 包装用箱事件控訴審 |
◆菓子の包装用箱が意匠権侵害をしているか否か争われた事件。控訴審でも非類似と判断。
【意匠の類否、要部の認定、意匠法23条】
「 原告は,三角錐形状の包装用容器において,稜線に「アクセントパネル」を設けた意匠は本件意匠出願前には存在せず,かかる態様が看者の注視するところとなることは明らかであり,アクセントパネルの形状は,看者に異なる美感を起こさせるほどのものということはできない旨主張する。
本件意匠と被告意匠は,本体の基本形状を三角形4面で形成される略三角錐形状とし,本体の天頂に位置する頂点から底面を形成する点に至る3本の稜線のうちの1本の稜線に沿って,凹状の面(アクセントパネル)を頂点間の全長にわたり設けたという基本的構成態様において共通するものであり,前記のとおり,略三角錐形状の頂点を結んだ当該稜線上にアクセントパネルを設けた公知意匠が見当たらないことからすれば,需要者は,まず,そのような基本的構成態様に注目するものと考えられる。
一方,上記のとおり,アクセントパネルが稜線上の全長に設けられ,多面体の1つの面としての機能を果たしていることからすれば,当該面の形状等は目につきやすく,そこから受ける印象の違いは,全体の美観に大きく影響するものというべきである。
そして,前記のとおり,本件意匠のアクセントパネルにおける直線で構成された略菱形状は,一般的にシャープで固い印象を与えるのに対し,被告意匠の曲線で構成された略紡錘形状は,一般的に丸く,やわらかな印象を与える。また,アクセントパネルの縦の長さと中央部分の幅の比が,本件意匠では約8対1であり,ほっそりと鋭い感じを与えるのに対し,被告意匠では約4対1であり,ふくよかでゆるやかな印象を与える。
さらに,アクセントパネル上下中央部分の具体的形状の差異により,本件意匠のアクセントパネルは,平坦な二等辺三角形2つを二等辺三角形の底辺部分(アクセントパネルの上下中央部分)で接続し,折曲部位とした形状が際立ち,多面体としての外観上の装飾機能を看者に強く感じさせるのに対し,被告意匠のアクセントパネル上下中央部分は,アクセントパネルに含まれない2つの頂点を結んでアクセントパネルを横断する折れ線部が水平方向に現れたにすぎず,折曲していないため,看者にとって単なる折り目として認識されるにすぎない点において,看者が受ける美観が異なる。
加えて,両者は,アクセントパネルの上下中央部分が,最もへこんだ最大幅部を形成し,天頂部及び底面を形成する上下頂点へ向けて徐々に先すぼまりとなっている点において共通するものの,右側面から見た場合,証拠(乙8の写真⑤,甲46の別添イ号写真「右側面図」,本件公報の「右側面図」)に示されるとおり(下記図参照),被告意匠は,アクセントパネルを形成する2本の側辺が丸いカーブを描く曲線であることから,略三角錐の本体の基本形状の印象が薄れるのに対し,本件意匠は,本体の略三角錐の印象が薄れることなく保たれている点においても,異なった印象を受ける。
イ この点,原告は,アクセントパネル部の具体的形状は,上下両端を尖らせ中央部を幅広とした全体の形状としては共通するものであり,差異は,左右両辺が直線であるか曲線であるかにすぎないので,アクセントパネル全体としては,むしろ共通のシャープな印象が強いものであると主張する。
そこで,検討するに,確かに,アクセントパネルの側辺が円弧状であるとしても,その曲率が小さい場合には,側辺は限りなく直線的に見え,また,その幅が狭い場合には,本件意匠と同様にシャープな印象を与え,類似する可能性が高いものと解される。しかし,被告意匠は,前記のとおり,長さと幅を約4:1とし,ある程度大きな曲率でカーブする円弧状の側辺であることから,紡錘状の葉様のふくよかでずんぐりとした印象を与え,上下両端を尖らせ中央部を幅広とした本件意匠と共通する形状の印象を凌駕するものと認められる。
したがって,両者のアクセントパネルが,上下両端を尖らせ中央部を幅広とした全体形状である点で共通するとしても,全体から受ける美観が異なるから,原告の上記主張は採用できない。 」
(知財高裁2部 清水裁判長)
◆Memo
・その物品に今までなかった特徴的形態を類否判断でどう評価するか。
・三角錐の稜線部分に「アクセントパネル」が形成されていることがウェイトが大きく、アクセントパネルの形状が多少異なっていても類似する?(原告主張)
・具体的構成態様の相違によって「凌駕」するか否かが違ってくる。
(2016.1.29. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-01-29 20:11
| 意匠
|
Comments(0)