2016年 02月 05日
不競 平成26(ワ)6406 クリニック患者情報の営業秘密侵害訴訟 |
◆元従業員によって持ちだされたクリニックの患者情報が営業秘密として保護されるか否かが争われた事件。
【不正競争防止法、2条1項7号、営業秘密、患者情報、顧客リスト、秘密管理性】
「…原告診療所の従業員は,誰でも電子カルテにアクセスして本件患者情報を利用することができ,訪問診療の際にはこれを打ち出したものも使用していたが,その持出しや保管,廃棄等についての具体的な指針はなかったというのである((1)ア)。また,被告P1は,患者の氏名や連絡先等を私物の携帯電話機に登録して業務に対応していたもので,そのことは原告代表者も知るところであったが,それにもかかわらず,原告は,被告P1が独立して同業を行うために退職することを知りながら,退職時に本件患者情報を破棄させるなどの対応をとっていない((1)イ)。さらに,本件患者情報は,各患者が利用している介護関係の施設等と必然的に共有されている状態にあり,そのため,是非は別として,それら施設から個人的関係を利用して本件患者情報を得ることも可能であって,現に被告診療所は情報の提供を受けている。またそうでなくとも,原告診療所で稼働していた者であれば,個別の患者宅の情報は個人的に記憶されているものであって,その記憶をもとに当該患者に接触は可能であるから((1)ウ,エ),本件患者情報は,原告だけの努力で秘密として管理しようがない情報であるということもできる。
そうすると,原告の職員らが,本件患者情報は,医師等専門職の職業上の守秘義務の対象であると認識していたとしても,原告の営業秘密として
管理されているものと認識することはできなかったというほかないから,上記のような管理体制のもとでは本件患者情報が秘密として管理されていたということはできない。 」
(大阪地裁21部 森崎裁判長)
(2016.2.5. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-02-05 19:40
| 不正競争防止法
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