2016年 03月 14日
特許 平成27(行ケ)10097号 パナソニック発光装置無効審判控訴審 |
◆特許庁で進歩性欠如を理由に無効とされた判断が、知財高裁で覆った事件。内部量子効率がどの程度以上の蛍光体を用いるかは設計事項にすぎないと言えるか?
【進歩性、設計事項、動機付け、特許法29条2項】
「本件出願の優先日当時,照明ユニットにおいて発光効率を高めるために,不純物の除去等の製造条件の最適化等により,蛍光体の内部量子効率をできるだけ高めることは,当業者の技術常識であったことが認められる。
しかしながら,他方で,不純物の除去等の製造条件の最適化等により,蛍光体の内部量子効率を高めることについても,自ずと限界があることは自明であり,出発点となる内部量子効率の数値が低ければ,上記の最適化等により内部量子効率を80%以上とすることは困難であり,内部量子効率を80%以上とすることができるかどうかは,出発点となる内部量子効率の数値にも大きく依存するものと考えられる。
しかるところ,甲3には,量子効率に関し,別紙2の表3に3種の化合物の「量子効率(QE)」が「29」%,「51」%,「30」%であること,段落【0067】に…「量子効率QEは43%」であることの記載があるだけであり,これ以外には,量子効率,外部量子効率又は内部量子効率について述べた記載はないし,別紙2の表4記載…の内部量子効率についての記載もない。(略)
以上によれば,甲3に接した当業者は,甲3発明において,Sr2Si4AlON7:Eu 2+ 蛍光体のSrの少なくとも一部をBaやCaに置換したニトリドアルミノシリケート系の窒化物蛍光体を採用した上で,さらに,青色発光素子が放つ光励起下におけるその内部量子効率を80%以上とする構成(相違点5に係る本件訂正発明の構成)を容易に想到することができたものと認めることはできない。 」
(知財高裁3部大鷹裁判長 審:×→裁:○)
◆Memo
・発光効率を高めるという技術常識が存在していても、具体的なパラメータや、前提となる構成、効率改善の限界etc.も考慮。
(2016.3.14. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-03-14 18:16
| 特許裁判例
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