2016年 03月 29日
特許 平成25年(ワ)6674号 棚装置侵害訴訟事件 |
◆被告が製造販売する金属製ワゴンが特許権を侵害するとして、約2億5千万円の損害賠償請求が認められた事件。
【特許権侵害、損害額、特許法102条、競合関係、特§102②の「利益」、控除される経費、特§102③、重畳適用】
(特許法102条2項の利益について)
「 (2) 損害額(特許法102条2項の利益)
特許法102条2項の「利益」とは,当該特許権を侵害した製品の売上合計額から侵害製品の製造販売と直接関連して追加的に必要となった経費のみを控除したものを指すと解するのが相当である。…(略)…
イ 控除される経費について
(ア) 被告各製品の製造原価
a 材料費…
b 加工費及び管理費 …
c 製造原価率の算定 …
(イ) その他の経費 …(略)… 」
(推定覆滅事由について)
「ウ 推定覆滅事由等
(ア) 特許権等の侵害者が受けた利益を特許権者等の損害と推定する特許法102条2項の推定を覆滅できるか否かは,侵害行為によって生じた特許権者等の損害を正に回復するとの観点から,侵害製品全体に対する特許発明の実施部分の価値の割合のほか,市場における代替品の存在,侵害者の営業努力,広告,独自の販売形態,ブランド等といった営業的要因や侵害製品の性能,デザイン,需要者の購買に結び付く当該特許発明以外の特徴等といった侵害品自体が有する特徴などを総合的に考慮して判断すべきである。 」
(覆滅された部分について§102③の適用はできるかについて)
「 (3) 特許法102条3項の重畳適用について
原告は,覆滅された部分については,特許法102条3項の重畳適用により,実施料相当額を認めるべきである旨主張する。
この点,同条2項は,侵害者が侵害製品を製造販売しなかった場合に特許権者が得られたであろう利益(逸失利益)を損害として算定するものであるのに対し,同条3項は,侵害者が侵害製品を製造販売することを前提に,それに対する実施料相当額を損害として算定するものであって,両者は,その前提を異にする別個の損害算定方法を定めたものである。そして,同条2項による損害額を算定するに当たり,推定が一部覆滅された場合でも,少なくともそれが前記(1)のような侵害者に特有の製品上の競争力があることによる場合には,損害額算定の対象とした侵害行為による特許権者の逸失利益は,一部覆滅後のものとして評価され尽くされているから,推定が一部覆滅された部分について同条3項による損害額を認めることは,同一の侵害行為について前提を異にする両立しない損害の賠償を二重に認めることとなり,法が予定するところではないと解するのが相当である。 」
コージ産業vs.サカエ
(大阪地裁26部高松裁判長)
(2016.3.29. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-03-29 19:57
| 特許裁判例
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