2016年 10月 26日
特許 平成28(ネ)10042 島野製作所vs.Apple接触端子事件(控訴審) |
◆Appleの電源ケーブルが島野製作所の特許権を侵害するか否かが問題となった件で、審査経過を参酌し「押付部材」は「球」に限定されると解釈して、技術的範囲に属さないと判断した事件。非侵害。→ 知財高裁でも非侵害と判断(2016年10月13日)。
【技術的範囲、特§70、明細書の開示、補正、分割出願、出願経過、限定解釈】
◆知財高裁 平成28年(ネ)10042号 (第4部、平成28年10月13日)
・知財高裁でも非侵害と判断 [均等/第1要件/第5要件]
追加(2016-11-1)
・以下、判決要旨より
”
1 本件は,控訴人が,被控訴人らに対し,控訴人は,本件特許権を有しており,被控
訴人らによる被告製品の輸入及び販売が本件特許権を侵害するとして,①特許法100条1項に基づき,被告製品の使用,譲渡,輸入,譲渡の申出の差止めを求めるとともに,②不法行為(民法709条)に基づき,本件特許権の設定の登録がされた平成26年1月10日から訴え提起の前日である同年8月5日までの特許法102条3項による損害の賠償等及び遅延損害金の支払を求めた事案である。 原判決(東京地裁平成26年(ワ)第20422号)は,控訴人の請求をいずれも棄却した。
2 本判決は,以下のとおり,被告製品は,本件特許の特許請求の範囲請求項1に係る発明(本件発明)の技術的範囲に属するとは認められないと判断した。
被告製品と本件発明とは,押付部材とプランジャーピンとの接触に関し,技術的意義を異にするものということができる。上記技術的意義を踏まえると,被告製品のコマ状部材は,構成要件Dの「押付部材」に該当せず,ほかに,被告製品の構成中,「押付部材」に該当するものはない。
また,被告製品のコマ状部材の球状部がプランジャーピンの傾斜凹部を押すことは,構成要件Dの「押圧」に該当せず,ほかに,被告製品の構成中,「押圧」に該当するものはない。
特許請求の範囲に記載された構成中,相手方が製造等をする製品又は用いる方法と異なる部分が存在する場合において,均等侵害の成立が認められるためには,上記異なる部分の全てについて均等の5要件が満たされることを要するところ,控訴人は,相違点のうち,構成要件Dの「押付部材」が球形であるのに対し,被告製品のコマ状部材が球形ではないという点にのみ均等の5要件を主張するにとどまるから,主張自体,失当である。
また,本件発明と被告製品は,本質的部分において相違することが明らかであるから,均等侵害の成立を認める余地はない。
以 上
”・技術的範囲に属さず、非侵害
「…プランジャーピンとコイルバネの間に介在する部材として記載されているのは「絶縁球」のみであること(乙13,14),③本件特許は平成25年4月19日に分割出願されたものであり,その特許請求の範囲に,プランジャーピンとコイルバネの間に「押付部材」を介在させる旨記載されたこと(乙15),④原告は,同年10月11日,押付部材に係る特許請求の範囲の記載を「少なくとも一部に球状面を有する押付部材の球状部」と補正したこと(乙17),⑤これに対し,同月25日,特許法36条6項1号違反を理由1(発明の詳細な説明には押圧部材に絶縁球を用いることが記載される一方,請求項1には絶縁性を有しない押圧部材が記載されていること),同法29条1項3号及び2項の違反を理由2及び3(原出願に「押付部材」として記載されていたのは「絶縁球」のみであり,これを「少なくとも一部に球状面を有する押付部材」とすることは適法な分割出願でないので,請求項1記載の発明は原出願の公開特許公報により新規性又は進歩性を欠くこと)とする拒絶理由通知が発せられたこと(乙4),⑥原告は,同年11月8日,上記④の補正後の特許請求の範囲の記載を「押付部材の球状面からなる球状部」と補正する旨の手続補正書と,絶縁性を有しない押付部材でも本件発明の効果を奏するので,発明の詳細な説明に記載されたものといえる旨の意見書を提出したこと(乙5,6),⑦同月27日に特許査定がされたこと(乙19),以上の事実が認められる。
上記事実関係によれば,本件発明の「押付部材」は,少なくとも一部に球状面を有するものでは足りず,その全体が球であるものに限られるということができる(仮に,一部にのみ球状面を有するものが含まれるとすれば,本件特許は違法な分割出願によるものとして新規性欠如の無効理由を有することが明らかである。)
⑷ 以上によれば,構成要件D2の「押付部材」は「球」に限定されると解すべきものであって,別紙被告ポゴピン断面図記載の「コマ」がこれに当たるとは認められないから,被告製品は本件発明の技術的範囲に属しないと判断するのが相当である。 」
(東京地裁46部長谷川裁判長)
(2016.3.30. 弁理士 鈴木学)
(2016.10.26. 追記)
by manabu16779
| 2016-10-26 18:23
| 特許裁判例
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