2016年 06月 14日
著作 平成25年(ワ)33167号 CD無断レンタル音楽配信事件 |
(共同不法行為について)
「…以上によれば,本件CDのレンタル又は本件楽曲の配信について原告ノアの許諾があったと認めることはできない。したがって,被告Bが,被告タッズの代表者として,被告スペースに対し,レンタル事業者へのレンタル用CDの販売やインターネット配信会社への本件楽曲の配信まで含めて委託する内容の本件再委託契約を締結し,その結果,本件CDのレンタルや本件楽曲の配信が行われたことは,原告ノアのレコード製作者としての複製権,貸与権及び譲渡権を侵害するものと認められる。
また,上記経緯に照らせば,被告タッズらに少なくとも過失があったことも明らかである。したがって,被告タッズらには,原告ノアの著作隣接権(貸与権及び送信可能化権等)を侵害する共同不法行為が成立する。
イ 被告スペースについて
第三者が著作権や著作隣接権を有する著作物の利用について契約を締結する場合,当該契約の相手方が当該著作物の利用を許諾する権限を有していなければ,当該契約を締結しても当該著作物を利用することはできない。したがって,当該契約の当事者としては,相手方の利用許諾権限の有無を確認する注意義務があるというべきであり,これを怠って当該著作物を利用した場合,当該第三者に対する不法行為責任を免れないと解される。
これを本件についてみるに,被告スペースは,本件再委託契約の締結時において,被告タッズがレコード製作者及び実演家の各著作隣接権を有しないことを認識していたと認められるところ(乙2,弁論の全趣旨),被告スペースらは,被告タッズの利用許諾権限に疑義等を抱かしめるような事情はなかったと主張するのみで,被告スペースにおいて,著作隣接権者に問い合わせ,又は本件契約書を確認するなどの方法によって,本件CD及び本件楽曲についての被告タッズの利用許諾権限を確認した等の主張はないし,証拠上もこうした事実を認めることはできない。
そうすると,被告スペースは,本件CDの無断レンタルや本件楽曲の無断配信について少なくとも過失があると認められるから,原告ノアに対し,被告タッズらとの共同不法行為が成立する。」
(同一性保持権)
「(1) 争点7(同一性保持権侵害の不法行為の成否)について
原告Aは,被告らが,①MP3,AAC又はWMA等の圧縮フォーマットを利用して本件楽曲の音声を圧縮して配信したこと及び②本件楽曲12曲を曲毎に配信したことが,いずれも本件楽曲についての同一性保持権を侵害する旨主張する。
そこで検討するに,音声の圧縮によって本件楽曲の音質が一定程度変化することについては被告らも認めるところであるが,配信時のデータの圧縮に伴う技術的な制約によるものであって「やむを得ないと認められる改変」(法90条の3第2項)に当たるというべきである上,原告Aが本件契約後の平成22年12月27日に被告Bに送信したEメール中に「圧縮をやって頂きたいと思っておりました。」「引き続き圧縮をお願いできますでしょうか?」などの記載があることからすれば(丙5の2),原告Aも,本件楽曲の圧縮を了承していたことが推認される。こうした事情に照らせば,上記①の行為について,原告Aの同一性保持権を侵害するものということはできない。なお,本件楽曲はいずれも独立の楽曲であり,原告Aが本件CDにおける本件楽曲の配列を工夫したとしても,この点は実演家の同一性保持権の保護範囲に含まれるものではないから,上記②についても原告Aの同一性保持権を侵害するものとは認められない。」
ノアコーポレーション、タッズ・インターナショナル、スペースシャワーネットワーク
(東京地裁47部 沖中裁判長)
(2016.6.13. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-06-14 01:26
| 著作権法
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