2017年 01月 18日
特許 平成28年(ネ)10092号 コーナークッション侵害訴訟事件(控訴審) |
◆建設現場等で使用されるコーナークッションの特許侵害訴訟で、被告製品が「クッション材が露出している」との構成要件を充足しているか否かが争点となった事件。地裁・高裁いずれも、構成要件F充足せず非侵害と判断。
◆大阪地裁 平成27年(ワ)6382号、非侵害
【技術的範囲、クレーム文言の解釈、発明の課題・技術的意義、特§70】
◆知財高裁 平成28年(ネ)10092号、非侵害
「
…構成要件Fの「露出」は,長尺裏面側シート部同士の間の短尺クッ
ション材が,長尺裏面側シート部及び粘着材層を含め何らの覆いもないことを意味するものと解するのが相当であり,このように解することは,「露出」自体の通常の語義からも自然である。
⑵ 構成要件Fの充足性について 被告製品は,前記第2の2のとおり,長手方向中央部周辺において,短尺クッシ
ョン材の裏面が,長尺裏面側シート部に覆われておらず,したがって,長尺裏面側
シート部の間から見える状態にあるものの,その部分も含む裏面全面が粘着材層で
覆われている。 よって,被告製品が構成要件Fを充足しないのは明らかである。
」(知財高裁4部高部判事、平成29年1月17日)
「…イ ところで「露出」とは,「あらわに,むき出しになること」(広辞苑第6版)を意味するが,上記認定した本件発明の課題及び効果に照らせば,本件発明におけるその技術的意義は,コーナークッション内を通気性,透湿性が制限された状態から解放してその弊害を除去するというだけでなく,製品を長手方向に折り曲げても,クッション裏面の幅方向中央部周辺に裏面シート部と粘着材層がないことで,裏面シートと粘着材に皺やたるみが生じず,粘着材同士がくっつかず,その結果,製品をコーナー部に密着させやすくするという点にもあるものと解される。
そうすると,構成要件Fの「前記長尺裏面側シート部同士の間から,前記複数の短尺クッション材が露出している」とは,コーナークッション裏面において,複数の短尺クッション材の幅方向中央部周辺が長尺裏面側シートに覆われておらず,長尺裏面側シートの間から見える構成となっていることを指すのみならず,長尺裏面側シートに覆われていない幅方向中央部周辺の短尺クッション材が粘着材にも覆われていないことを指すと解するのが相当である。
これに対し被告製品は,長手方向中央部周辺において,短尺クッション材が長尺裏面側シート部に覆われておらず,同シート部の間から短尺クッション材が見える構成となっており,本件発明の短尺クッション材に相当するスポンジの幅方向中央部周辺を含め,その裏面全面が粘着シール(粘着材層)で覆われているというものであるから,上記技術的意義を有する「短尺クッション材が露出している」という要件を充たすということはできない。 したがって,被告製品の構成は,構成要件Fを充足しないというべきである。 」
アラオ、ケーマックス
(大阪地裁21部 森崎裁判長)
(2016.9.2. 弁理士 鈴木学)
(2017.1.18. 追記)
by manabu16779
| 2017-01-18 12:53
| 特許裁判例
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