2017年 02月 06日
著作 平成28年(ネ)10091号 朝日新聞デジタル映画祭記事事件(控訴審) |
◆ 朝日新聞デジタルに掲載の記事が原告ウェブサイト記事を「翻案」したものか否かが争点となった事件、翻案権侵害等に該当せず(地裁)。名誉毀損等にも該当せず(高裁)。
◆知財高裁 平成28年(ネ)10091号 名誉毀損等にも該当せず
http://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/464/086464_hanrei.pdf
【著作物性、翻案権、著作権法27条、本質的特徴の直接感得、名誉毀損、著作権法113条6項の「名誉又は声望を害する方法」】
http://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/464/086464_hanrei.pdf
(知財高裁2部清水判事、平成29年1月24日)
◆東京地裁 平成28年(ワ)3218号 翻案権侵害ではない
(翻案権侵害)
「1 争点(1)ア(翻案権侵害の成否)について
(1) 著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的な表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。そして,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号),既存の著作物に依拠して創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案には当たらないと解するのが相当である(最高裁平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。
(2) 原告は,被告各表現が原告各表現と同一性を有する部分として,概要,①映画産業の国際発展を妨げている利権構造批判,②東京国際映画祭の事業費,事業委託先及びその関係,③映画産業の既得権益たる社会的集団を「映画村」と表現し,その状態を「独占」と表現したこと,④平成26年の映画祭事業費と委託費の割合,⑤既得権益を構成する企業名,⑥東京国際映画祭とクールジャパン政策の連携等を挙げる。
しかし,このうち①,②,④,⑤及び⑥は,原告の思想,感情又はアイデア,事実又は事件など,表現それ自体でない部分についての同一性を主張するものにすぎない。
また,③のうち「独占」との表現は,明らかに一般用語であって,表現上の創作性はない。
さらに,③のうち「映画村」との表現についても,ある特定の限られた分野又は共通の利害関係を有する一定の社会的集団を「○○村」と表現することは経験則上一般にみられるありふれた表現であって,これに,わずか3字からなる単語にすぎないことも併せると,この表現自体が著作権法上保護すべき創作的な表現であると認めることはできない。この点に関して原告は,被告記事では「映画村」(movie village)という表現に引用符の「“”」が用いられ,「原発村から派生した造語」との注釈まで付されていることを指摘するが,引用符及び注釈の付記によって直ちに被告が著作権法上の創作性を自認したことにはならないというべきであるから,原告の指摘は上記判断を左右するに足りない。
したがって,被告各表現は,原告の主張によっても,表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において原告各表現と同一性を有するにすぎず,表現上の本質的な特徴の同一性を維持したものとは認められないから,被告各表現が原告各表現を翻案したものであるということはできない。 」
(東京地裁40部東海林裁判長)
(2016.9.12. 弁理士 鈴木学)
(2017.2.6. 追記)
by manabu16779
| 2017-02-06 21:10
| 著作権法
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