2016年 09月 29日
特許 平成27年(ネ)10016号 ティッシュペーパー侵害訴訟事件 |
◆クレーム記載の静摩擦係数について、測定方法が複数あり得る場合の構成要件充足性が争点となった事件。いずれの方法を採用した場合にも当該数値範囲内となるようなものでなければ、当該構成要件を充足するとはいえない。
【数値限定発明、静摩擦係数、試験方法が複数ある、構成要件が充足されるための条件、侵害訴訟、民709条、技術的範囲、均等論、クリネックス、JIS規格、,JIS P 8147(1994)、おもり、固定方法、テッシュの形状/サイズ、目視、センサ検出】
(構成要件yの充足性)
「 前記 のとおり,本件第2明細書には,静摩擦係数をJIS規格に準じた方法で測定する旨明記されているのであるから,構成要件yが規定する静摩擦係数の測定方法に関し,特許請求の範囲及び本件第2明細書のいずれにも記載されていない事項については,原則としてJIS規格に準じて測定すべきである。
JIS規格には,紙の摩擦係数試験方法として水平方法と傾斜方法がある旨記載されているところ(乙1),前記 及び は,その内容自体から傾斜方法を採用していることが明らかである。よって,構成要件yが規定する静摩擦係数の測定方法に関し,特許請求の範囲及び本件第2明細書のいずれにも記載されていない事項については,基本的に傾斜方法に係るJIS規格に準じて測定するのが相当である。
他方,特許請求の範囲,本件第2明細書及びJIS規格のいずれにも記載されていない事項は,構成要件yの静摩擦係数の測定方法において規定されていないというべきであり,そのような事項については,技術常識を参酌し,異なる測定方法が複数あり得る場合には,いずれの方法を採用した場合であっても構成要件yの数値範囲内にあるときでなければ,構成要件yを充足するとはいえない。なぜなら,当業者において,構成要件yの静摩擦係数の測定方法において規定されている事項については,同規定に従い,上記測定方法において規定されていない事項については,あり得る複数の測定方法から適宜に1つを選択して静摩擦係数を測定した結果,構成要件yの数値範囲外であったにもかかわらず,上記複数の測定方法のうち別のものを選択して測定すれば,構成要件yの数値範囲内にある静摩擦係数を得られたとして,構成要件yの充足性を認め,特許権侵害を肯定することは,第三者に不測の利益を負担させることになるからである。しかも,このような事態は,特許権者において,静摩擦係数の測定値に影響を及ぼす測定条件を特許請求の範囲又は明細書において明らかにしなかったことから生じたものということができる。
そうすると,上記の不測の不利益を第三者に負担させることは相当ではないから,構成要件yの静摩擦係数の測定方法に規定されている事項につき,同規定に従って測定している限り,上記測定方法に規定されていない事項についてあり得る複数の測定方法のうちいずれの方法を採用した場合であっても,静摩擦係数が構成要件yの数値範囲内にあるときでなければ,構成要件yを充足するということはできない。 」
王子製紙、日本製紙クレシア
(知財高裁4部 高部裁判長)
◆関連事件:
・マルチトール含蜜結晶事件 平成14年(ワ)4251号
◆Memo:
・測定方法a、bがある場合:
→ 方法aではクレームの数値範囲外だけど、方法bでは範囲内になってしまう。。→ 構成要件充足??→ 充足しない。
(2016.9.29. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-09-29 19:51
| 特許裁判例
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