2016年 10月 14日
商標 平成28年(行ケ)10109号 HOKOTABAUM事件 |
◆「HOKOTABAUM」が分離観察されるべきもので、かつ、商標3①3(記述的商標)に該当するものであると判断された事件。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/190/086190_hanrei.pdf
(3条1項3号 規範) 「商標法3条1項3号は,「その商品の産地,販売地,品質,原材料,効能,用途,形状(包装の形状を含む。…),生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴,数量若しくは価格又はその役務の提供の場所,質,提供の用に供する物,効能,用途,態様,提供の方法若しくは時期その他の特徴,数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は,商標登録を受けることができない旨を規定し,同条2項は,「前項第3号から第5号までに該当する商標であっても,使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては,同項の規定にかかわらず,商標登録を受けることができる」旨を規定している。 その趣旨は,商標法3条1項3号に該当する商標は,特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに,一般的に使用される標章であって自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものとして,商標登録の要件を欠くが,使用をされた結果,自他商品識別力を獲得するに至った場合には,商標登録を受けることができるものとしたものである。 そして,商標登録出願に係る商標が商標法3条1項3号にいう「商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当するというためには,必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する土地において現実に生産され又は販売されていることを要せず,需要者又は取引者によって,当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般に認識されることをもって足りるというべきである(最高裁昭和60年(行ツ)第68号同61年1月23日第一小法廷判決・裁判集民事147号7頁)。 」
(当てはめ) 「 ア 本願商標の構成態様について
【結合商標、分離観察、一連一体、指定商品との関係、識別力、3条1項3号、産地販売地+商品名、鉾田市、バウムクーヘン】
原告は,本願商標の構成態様からは,「HOKOTA」と「BAUM」に分離して観察すべきではない旨主張する。
しかし,本願商標が指定商品である「鉾田市産のバウムクーヘン」に使用された場合,「HOKOTA」の文字部分は「鉾田市」を意味し,「BAUM」の文字部分は「バウムクーヘン」の意味を有するために,需要者又は取引者に対し,商品の出所識別標識としての印象を与えないものである。
そして,本願商標を構成する「HOKOTA」の文字部分及び「BAUM」の文字部分の意味や使用状況,菓子業界における取引の実情に照らすと,本願商標に接する需要者又は取引者は,本願商標を,商品の産地又は販売地が鉾田市であることを指す「HOKOTA」の文字部分と,商品「バウムクーヘン」を表す「BAUM」の文字部分とを組み合わせてなるものとして認識するというべきである。
したがって,本願商標は「HOKOTA」と「BAUM」の各文字部分に分離して観察することができるものということができる。
・・・略・・・
原告は,日本には少なからず鉾田姓も存在し,「HOKOTA」の文字部分は鉾田姓も連想させるから,本願商標から,鉾田市が商品の産地又は販売地として認識されるものではない旨主張する。
しかし,本願商標が指定商品である「鉾田市産のバウムクーヘン」に使用された場合,「HOKOTA」の文字部分が「鉾田市」を意味するものと認識されることは明らかである。また,証拠(甲56,乙34~36)によれば,日本人の姓として「鉾田」は,広く一般に存在するものではないと認められる。加えて,日本人の姓として「鉾田」が存在するとしても,前記のとおる地方自治体である鉾田市が茨城県に所在し,さらに,鉾田市を表示するに際し,「HOKOTA」又は「Hokota」との欧文字を用いることが少なからずあると認められる。
そうすると,本願商標のうち「HOKOTA」の部分は,需要者又は取引者に,茨城県所在の鉾田市を表示するものと容易に認識させるものということができ,さらに菓子業界の取引の実情を考慮すれば,鉾田市が商品の産地又は販売地であろうと一般に認識されるものということができる。
ウ 取引状況について
原告は,鉾田市が本願商標の指定商品の産地又は販売地として,需要者又は取引者に認識されているとはいえない旨主張する。
しかし,前記のとおり,商標法3条1項3号にいう商標に該当するというためには,必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する土地において現実に生産され又は販売されていることを要せず,需要者又は取引者によって,当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般に認識されることをもって足りるというべきである。
したがって,鉾田市が本願商標の指定商品の産地又は販売地として,需要者又は取引者に認識されているか否かは,本願商標の商標法3条1項3号号該当性の判断を左右するものではない。
エ 商標登録例について
原告は,本願商標と構成態様が極めて似ている商標が多数登録されていることから,本願商標は当然に登録されるべきである旨主張する。
しかし,登録出願に係る商標が商標法3条1項3号や同条2項に該当するものであるか否かは,当該登録出願の査定時又は審決時において,その商標が使用される商品の取引の実情等に基づいて,個別具体的に判断されるべきものである。
したがって,本願商標と構成態様が類似する商標が多数登録されているとしても,このことは本願商標の商標法3条1項3号該当性の判断を左右するものではない。
(4) 小括
以上によれば,本願商標は,需要者又は取引者によって,当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般に認識されるものであるから,商標法3条1項3号に該当する。 」
(知財高裁4部高部裁判長)
(2016.10.14. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-10-14 12:19
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