2017年 04月 26日
商標 平成28年(ネ)10106号 フェルガードvsフェルゴッド事件(侵害訴訟控訴審) |
◆認知症患者向けサプリメントの商品名に関し、商標権侵害が問題となった事件。地裁・知財高裁いずれも→非類似。
◆知財高裁 平成28年(ネ)10106号 平成29年4月25日 → 非類似
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/714/086714_hanrei.pdf
(類否判断) 「 ア 外観 本件商標「フェルガード」と被告各標章のうち「フェルゴッド」の部分は,いずれもカタカナ6文字であって,「フェル」で始まり「ド」で終わる点において,共通する。 しかし,「フェルガード」と「フェルゴッド」の部分の外観が異なることは明らかである。また,本件商標は「フェルガード」と標準文字から成り,「フェル」や「ド」の部分が特に強調されているものではなく,被告各標章の「フェルゴッド」の部分も同様であって,語頭の「フェル」や,語尾の「ド」のみが通常人の記憶に残りやすい部分ということはできない。 したがって,本件商標「フェルガード」と被告各標章の「フェルゴッド」の部分の外観は,需要者に異なる印象を与えるものである。 イ 観念 (ア) 本件商標は,需要者である認知症患者や介助者に対して,特定の観念を生じさせるものではない。 控訴人は,本件商標から「フェルラ酸を含有する健康補助食品」との観念が生じる旨主張する。 しかし,フェルラ酸の名称や効果が一般に広く認知されているとも,フェルラ酸を「フェル」と略称することが一般的であるとも認められないから,原告商品の購入者は,本件商標自体から,その具体的成分までも認識するものではない。 …略… (イ) 一方,被告各商品の需要者は,被告各標章自体から,その具体的成分までも認識するものではなく,「フェル」との文字列を含む登録商標の利用状況からすれば,被告各標章は,被告各商品の需要者である認知症患者らに,特定の観念を生じさせるものではない。 (ウ) 以上のとおり,本件商標からも,被告各標章からも,需要者に特定の観念は生じない。 ウ 称呼 本件商標から生じる称呼は「フェルガード」であり,被告各標章から生じる称呼は「フェルゴッド」であるところ,両者は,「フェル」で始まり「ド」で終わるとの点において共通するほか,相違する「ガ」と「ゴ」は,その子音が共に50音図の同行に属し,相紛らわしいといえなくもない。 しかし,それぞれの称呼において,全体が5ないし6音程度の中で,最も響きの強い「ガ」と「ゴ」の母音は異なるほか,「ガー」と「ゴッ」とでは,音の長短も異なる。 したがって,本件商標と被告各標章の「フェルゴッド」の部分の称呼は,需要者に,その全体の語調,語感において,異なる印象を与えるものである。 エ 取引の実情 前記認定のとおり(引用に係る原判決第3の1⑷ア及びイ),原告商品と被告各商品は,いずれもフェルラ酸とガーデンアンゼリカを主成分とする健康補助食品であり,いずれも白色系統色を基調とする外箱を包装とすることが認められる。また,原告商品は,医師が認知症患者又はその介助者に購入を勧め,認知症患者又はその介助者が控訴人からインターネット上の通信販売で購入するというものであり,被告各商品も,認知症患者又はその介助者がインターネット上の通信販売を通じて購入するというものである。 しかし,前記イ(ア)のとおり,原告商品の需要者である認知症患者やその介助者に,本件商標がフェルラ酸を含有する健康補助食品を意味するものであると周知されていたと認めるに足りない。そして,需要者がインターネット上の通信販売を通じて商品を購入する場合であっても,本件商標及び被告各標章における外観,観念及び称呼のいずれかが,特に需要者に強く認識されるというものではなく,前記のとおり,本件商標と被告各標章のうち「フェルゴッド」の部分とは,外観が異なり,需要者に対して,称呼全体の語調,語感において異なる印象を与えるものである。 なお,原告商品は,認知症患者及びその介者を主たる需要者とするところ,認知症患者は,判断能力,記憶能力が一般人よりも低下し,十分な注意力を有さないこともあり得る。しかし,判断能力,記憶能力が相当程度低下した認知症患者にあっては,本人ではなく,その介助者が,原告商品の購入を決定し,実際の購入手続を行うのが一般的であるから,原告商品の需要者の注意力が殊更に低いことを前提として,本件商標と被告各標章の類否の判断を行うべきであるということはできない。 オ 小括 以上のとおり,本件商標と被告各標章は,外観は異なり,いずれも特定の観念を生じさせるものではなく,その称呼においても,全体の語調,語感において,異なる印象を与えるものである。そして,原告商品及び被告各商品の具体的な取引の実情を踏まえつつ,本件商標と被告各標章が,その外観,観念,称呼等によって需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察した場合,本件商標と被告各標章について,需要者に,商品の出所につき誤認混同を生じさせるおそれがあるということはできない。 」 (知財高裁4部高部判事、平成29年4月25日)
◆東京地裁 平成28年(ワ)8027号 平成28年10月12日 → 非類似
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/208/086208_hanrei.pdf
【商標の類似、外観、称呼、観念、誤認混同のおそれ、結合商標、フェルガード、フェルゴッド、サプリメント】
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/714/086714_hanrei.pdf
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/208/086208_hanrei.pdf
「 (5) 本件商標と被告各標章の類否
前記(2)ないし(4)を前提に,本件商標と,被告各標章のうち強く支配的な印象を与える部分である「フェルゴッド」とを対比する。
まず,本件商標と被告各標章「フェルゴッド」との部分からは,いずれも特定の観念を生じないものである。
次に,本件商標からは「フェルガード」の称呼を生じ,被告各標章の「フェルゴッド」の部分からは「フェルゴッド」の称呼を生じるところ,両称呼は,「フェル」で始まり「ド」で終わるとの点において共通するが,両称呼を一連に称呼した場合には,称呼全体の語調,語感において異なる印象を与えるものというべきである。
さらに,本件商標と被告各標章の「フェルゴッド」の部分の外観についてみても,同様に「フェル」で始まり「ド」で終わるとの点において共通するが,本件商標は「フェルガード」(標準文字)から成り,「フェル」や「ド」の部分が特に強調されているということもなく,この点は被告各標章の「フェルゴッド」の部分についても同様であるから,本件商標と被告各標章の「フェルゴッド」の部分とを一体的に観察すれば,両者の外観は異なる印象を与えるものというべきである。
以上によれば,本件商標が付された原告商品と被告各標章が付された被告各商品とがいずれもフェルラ酸とガーデンアンゼリカを主成分とする健康補助食品であり,いずれも白色系統色を基調とする外箱を包装とする点,通信販売により販売されている点,認知症の患者及びその家族を需要者とする点などにおいて共通すること,本件商標が付された原告商品について紹介する書籍,論文,記事等が複数存在することを考慮しても,なお,本件商標と被告各標章とを対比したときに,需要者において,商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあると認めることはできない
から,被告各標章は,本件商標に類似しないというべきである。 」
グロービア、ナチュラルビューティ
(東京地裁29部嶋末判事)
(2016.10.20. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-04-26 19:55
| 商標
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