2016年 10月 24日
特許 平成26年(行ケ)10155号 減塩醤油事件 |
◆減塩醤油の発明に関し、食塩濃度「7~9w/w%」の一部がサポートされていないと判断された事件。
【サポート要件、特§36⑥1、明細書の開示、数値範囲、課題解決原理、明細書中の一般的記載、技術的根拠、実施例の開示、技術常識】
「 …そうすると,食塩濃度が9.0w/w%,カリウム濃度が下限値に近い1.1w/w%である実施例3(窒素濃度1.99w/v%,窒素/カリウムの重量比1.62,塩味3,苦み1,総合評価○)において,食塩濃度を7.0w/w%に下げても,カリウム濃度を上限値の3.7w/w%まで増加させれば,塩味が3以上,苦みは3以下となり,総合評価も○となるものと,推認することはできない。
(c) その他本件明細書の表1の実施例・比較例を検討しても,食塩濃度7.0w/w%の場合に,塩味が3以上,苦みが3以下,総合評価が○以上という評価が得られ,本件発明1の課題を解決できることを認識することができる記載は認められない。
・・・略・・・
(4) 被告の主張について
ア 被告は,本件明細書の発明の詳細な説明に「本発明の減塩醤油類の食塩濃度は・・・7~9w/w%であることが好ましく」(【0009】)と記載され,具体的には,実施例において,数値範囲を満たす減塩醤油が,塩味が強く感じられ,味が良好であって苦みも低減されることが記載されているから,サポート要件違反はない旨主張する。
しかしながら,本件発明のうち,当該発明の課題を解決できることを具体的に示しているのは,上記(1)エのとおり,食塩濃度が9w/w%の場合のみである。食塩濃度が7w/w%まで低下した場合の塩味や苦みを推認するための技術的な根拠が,本件明細書に記載されておらず,また,どの程度になるかということについての技術常識もない以上,【0009】の「7~9w/w%であることが好ましく」という一般的な記載のみをもって,食塩濃度の全範囲において発明の課題を解決できることについての技術的な裏付けある記載があると認めることはできない。
したがって,被告の主張は,採用することができない。 」
キッコーマン、花王
(知財高裁2部、清水判事)
(2016.10.24. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-10-24 12:34
| 特許裁判例
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