2016年 10月 26日
不競 平成27年(ワ)2504号 ZENSHIN(全秦)グループ事件 |
◆パチンコ店の営業表示が法2条1項1号の不正競争に該当するか等が問題となった件。該当する、損害額666万円(99%覆滅)。
(損害額)
「イ 検討
被告が運営する被告2店舗は,原告標章2,7を外壁に掲げた原告店舗の近隣にあって競業関係にあり,しかも周知商品等表示である原告各標章5ないし7に類似する被告標章11,12を店舗の出入口に掲げていたというのであり,またその店舗名に「ゼンシン」という原告及び「全秦グループ」を他から識別する部分を含んでいたというのであるから,その開業当初は,需要者である遊戯客に原告店舗ないし原告との関係につき一定の誤認混同を生じさせたことは優に認められるといえる(上記ア(オ)dのとおり,取引業者であるが,現に誤認混同していた実例も認められている。)。
しかし,上記ア(エ)によれば,そもそもパチンコ店等の需要者である遊戯客による店舗選択は,当該パチンコ店等の経営主体がどこであるとか,どのパチンコ店グループの店舗であるかということを重視するのではなく,パチンコやパチスロの台の機能や機種,出玉感,交換率等の個別店舗の具体的営業内容そのものを主要な選択要素として決せられることが認められ,これからすると当該店舗の営業主体の誤認混同が当該店舗の選択,ひいてはその売上げあるいは損害に結び付く関係は薄弱であるということができる。
なお上記ア(エ)からは,需要者である遊戯客には,店員の接客態度や店舗が清潔に清掃されているか等のサービスについても選択時に考慮する要素としている者がいることも認められるから,それらの需要者であれば,店舗の営業主体を指し示す営業表示を手掛かりに当該店舗で受けられるサービスを期待して店舗選択をする可能性があることは否定できない。しかし,需要者であるパチンコ店等の遊戯客は,パチンコ店を極めて頻回に利用するのが一般的であるというのであるから(週1日の利用でも年間72日の利用になる。),仮に被告2店舗の需要者の利用が,被告標章の使用によりもたらされた被告店舗が原告と関係する店舗であるとの誤認混同から始まったとしても,当該店舗のサービスを実際に経験している以上,その後の継続的利用が原告と被告2店舗との関係についての誤認混同の影響によりもたらされているとは考え難いところである。
そして,そもそも原告店舗及び被告2店舗とも隠岐の島という需要者が限られた市場の中で他の4店舗とも競合している店舗であるが,被告2店舗のうち,ゼンシン隠岐がもともとあったパーラー隠岐という別店舗の営業実態を実質上承継している関係にあることからすると,被告2店舗の営業が原告店舗の顧客の誤認混同により生じた需要によって継続的に成り立っているとはおよそ考えられず,むしろその影響は極めて小さいと見る方が合理的である。
なお,本件において被告が被告標章を使用して営業を営んでいるのは隠岐の島の被告2店舗だけであり,不正競争防止法5条2項で推定されるべき原告の損害は,被告2店舗の営業の影響を受ける範囲,すなわち,その競合店となる原告店舗において生じた損害だけが問題となるというべきであるから,被告による被告各標章の使用態様のうち,隠岐の島の住民において認識されないような岡山県津山市所在の本件建物の外壁に掲げられた被告標章2,6による標章の使用は原告店舗の営業に損害を全くもたらさないことは明らかである。
したがって,このような事情を総合考慮すると,本件における被告の得た利益と原告の受けた損害の関係に不正競争防止法5条2項の推定規定の適用があるとしても,その推定は99%の限度で覆滅されるというべきである。
なお,原告は,原告店舗と被告2店舗の営業方法の類似性,さらには原告代表者としてのP1の競業避止義務違反さえ問題としているが,そこで問題とされる損害は,結局のところ,営業表示の誤認混同に由来する損害ではなく,単に原告店舗の近隣に競合店である被告2店舗が出店されたことから生じる原告店舗の売上減少の問題にすぎないから,不正競争防止法2条1項1号の不正競争により生じる損害の議論としては失当であり,上記認定を左右するものではない。
(4) 上記(1)アのとおり,被告が,被告2店舗で得た利益は合計6億6654万1348円であるから,原告において損害と推定される額は,666万5413円であると認められる。」
全秦通商、全功
(大阪地裁21部森崎裁判長)
◆非類似と判断された標章
原告は,原告標章1の上下に2本の直線を追加すると,「Z」との文字が浮かび上がり,被告標章1も,原告標章1を構成する2つの三角形状の図形にそれぞれ3本の白線を追加したものにすぎず,同様に「Z」の文字が浮かび上がるもので,両者は類似する旨主張する。
しかし,標章の上下に2本の直線を追加すると「Z」の文字が浮かび上がるといったことは,需要者が容易に認識し得るものではないことからすれば,この点が類否に影響を及ぼすものではない。
原告標章1は,一辺を曲面の凹面で切り取られた赤色の鈍角三角形2つが上下に凹面が来るように点対称に配置された旗のようなマークであり,被告標章1は,原告標章1に,対置する底面に平行な3本の白い線を各鈍角三角形部分に入れたものであるので,確かに,外周の形態及び色は類似しているといえるが,本体である鈍角三角形に縞模様が入っているか否かは需要者が容易に区別し得るものであり,相当異なる印象を与えるものであるから,原告標章1と被告標章1を全体として見比べると,相当異なるものであることは一見して明らかである。
したがって,被告標章1は,原告標章1とは類似しないというべきである。」
◆Memo:
・ドメインに表示
行為主体?…ウェブサイトを開設している者。
(2016.10.26. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-10-26 19:52
| 不正競争防止法
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