2017年 01月 05日
特許 平成28年(ワ)15029号 雨水浸透坑掘削装置 |
◆フォークリフトを使用する掘削装置に関して均等侵害と言えるか等が争点となった事件。均等不成立。
「 (1) 文言侵害の成否 本件発明1①は金属製管体が挿通できる貫通孔を有する基台(構成要件1B),基台に立設された油圧ジャッキ(同1C)及び油圧ジャッキに支持されて昇降可能なスライダ(同1D)を有する雨水浸透坑掘削装置であるのに対し,被告装置は,フォークリフトを用いたものであって,上記の基台等を備えているとは認められない。 この点に関し,原告らは,フォークリフトの車体が基台に該当する旨主張するが,そのように解するとしても,これが「貫通孔」を有しないことは原告らの認めるところであり,また,油圧ジャッキが基台に立設されていることなど他の構成要件の充足性について原告らは何ら具体的主張をしていない。 したがって,文言侵害が成立しないことは明らかである。 (2) 均等侵害の成否 原告らは「貫通孔」(構成要件1B)について均等を主張するのみであり,上記(1)のその余の部分についての主張を欠くのでそれ自体失当というべきであるが,念のため検討する。 原告らの主張は,「貫通孔」は本件発明1①の本質的部分でなく,被告装置のフォークリフトの車体(「基台」に相当する。)の外側(前方)に設けられた空間が「貫通孔」と同一の作用効果を奏するから,均等侵害が成立する旨をいうものである。 そこで判断するに,本件明細書1(甲1の2)の記載によれば,本件発明1①は,従来の雨水浸透構造体においては工事そのものが大規模なものとなって街渠ます等の市街地における排水構造体として実施できないなどの問題点があったので(背景技術。段落【0002】,【0003】),その課題を解決するために,小規模な工事によって浸透性を有する地盤に浸透管を到達させることのできる浸透坑掘削装置を提供することを目的としたものであり(発明が解決しようとする課題。段落【0005】,【0006】),雨水浸透管を敷設すべき場所に基台を設置し,これに油圧ジャッキ,スライダ等を設けて,スライダの下降により金属製管体及びオーガスクリュを地中に圧入するという構成を採用することで(課題を解決するための手段。段落【0007】,【0008】),雨水浸透管を埋設すべき街渠ますの周辺に基台を設置する程度のスペースを利用して雨水浸透坑を掘削することができ,小規模な工事により十分な深さの雨水浸透坑を設けることができるという効果を奏する(発明の効果。段落【0024】)発明であることが認められる。 そうすると,本件発明1①は,少ないスペースを利用した小規模な工事とするために,基台上に油圧ジャッキ,スライダ等を設け,このスライダの下降により金属製管体及びオーガスクリュを基台の直下の地中に貫通孔を通して圧入するとした点に特徴があるということができる。これに対し,被告装置においては,雨水浸透管を敷設すべき街渠ますの側方にフォークリフトを配置するものであって,そのためのスペースを必要とするから,本件発明1①とは本質的部分を異にすると解すべきである。 したがって,均等をいう原告らの主張は失当である。 」 ホウショウEG、モグラ、スピーダーレンタル、ノアテック、向陽、サンリツ (東京地裁46部東海林裁判長、平成28年12月20日)
【文言侵害、均等侵害、本質的部分、第1要件、特§70、フォークリフト、基台の貫通孔の有無】
(2017.1.5. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-01-05 23:19
| 特許裁判例
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