2017年 02月 02日
特許 平成27年(行ケ)10201号 容器詰飲料事件 |
◆容器詰飲料の特許発明に関して進歩性や記載要件の無効理由が問題となった事件。審決ではサポート要件充足としたが、知財高裁では無しと判断。
【進歩性、サポート要件、明確性、実施可能要件、訂正、食品特許、技術常識、表色系、透過測定】
(サポート要件)
「 (3) 本件出願日当時の技術常識小括
前記(1)及び(2)によれば,本件出願日当時,アスコルビン酸の褐変により飲料が色調変化するという技術常識があったものの,イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化に起因して,飲料の色調が変化することは技術常識とはなっていなかったと認められる。
・・・略・・・
このような技術常識を有する当業者が,本件明細書の記載に接した際には,【0007】に記載された「顕在化した色調変化」,すなわち,比較例において観察されたb * 値の変化(Δb * )は,L-アスコルビン酸の褐変に起因する色調変化を含む可能性があると理解し,イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化のみを反映したものであると理解することはできないと解される。
そうすると,実施例において,アルコール類を特定量添加しpHを調整することにより,比較例に比べて飲料の色調変化が抑制されていることに接しても,当業者は,比較例の飲料の色調変化がL-アスコルビン酸の褐変に起因する色調変化を含む可能性がある以上,イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化が抑制されていることを直ちには認識することはできないというべきである。
・・・略・・・
ウ 以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件出願日当時の技術常識に照らして,本件訂正発明9~16は,容器詰飲料に含まれるイソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化を抑制することにより,当該容器詰飲料の色調変化を抑制する方法を提供するという課題を解決できるものと,当業者が認識することができるとはいえない。 」
三栄源エフ・エフ・アイ、花王
(知財高裁2部清水判事、平成29年1月31日)
(2017.2.2. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-02-02 22:01
| 特許裁判例
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