2017年 02月 28日
商標 平成28年(行ケ)10178号 NYLON審決取消訴訟事件 |
◆被服などを取扱商品とする指定役務に使用する商標「NYLON」の識別力が争点となった事件。識別力なし(3条1項6号)。
【自他商品等識別力、3条1項6号、ナイロン、原材料、フォント、アンケート調査、NYLON誌、ファッション】
(3条1項6号)
「 1 本願商標は,前記第2の1のとおり,欧文字の大文字「NYLON」を横書きしたものである。その書体は,原告も自認するとおり,「Futura」と称する書体を太字で表したものと酷似したものであるが,「Futura」と称する書体は,セリフ(文字の線の端につけられる線・飾り)のない書体であるサンセリフ書体の一種であり,フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」の「サンセリフ」の項において,ジオメトリック・サンセリフ(直線や円弧など,幾何学的な図形により骨格が形成されているサンセリフ体)の例の筆頭として取り上げられているほか,写真・イラスト,動画素材等のダウンロード素材を販売するウェブサイトにおいて,定番フォントの1つとされている(乙4,5,7)。また,文字からなる標章を太字で表すことも,一般的に行われていることである(乙5~11)。そして,本願商標は,この書体により概ね同じ大きさで書かれた文字を,概ね等間隔に,横一列に配置したものである。
そうすると,本願商標は,欧文字の大文字「NYLON」を,一般に知られている書体により,ありふれた大きさと配置で横書きしたにとどまるものであるから,これに接する需要者をして,外観上,特徴あるものとして強く印象付けられるとはいえず,欧文字の大文字「NYLON」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認識されるにとどまるものと認められる。
…略…
(2) 前記(1)認定の取引の実情によれば,ナイロンは,本願役務の取扱商品である被服,履物,かばん類及び袋物において,「ナイロンジャケット」のように商品分類の1つとして用いられることがあるなど,相当程度利用されている原材料(素材)であること,上記取扱商品の販売に当たっては,当該商品の原材料(素材)がナイロンであることを示すために,「ナイロン」,「Nylon」,「nylon」と共に「NYLON」の表示も少なからず用いられており,「NYLON JACKET」や「NYLON VEST」のように,「NYLON」の後ろに商品の種別を示す名称を続けて利用されていることが認められる。
(3) 本願役務は,被服,履物,かばん類及び袋物の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供であり,取扱商品の品揃え,陳列,接客サービス等といった最終的に取扱商品の販売により収益を上げるためのサービス活動をいい,顧客の商品選択が容易となるように,商品の原材料(素材)その他の特長等を説明することも含まれる。
(4) 以上によれば,欧文字の大文字「NYLON」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認識される本願商標を,その指定役務に使用した場合,これに接する需要者は,当該指定役務の小売の業務における取扱商品である被服,履物,かばん類及び袋物の原材料(素材)として相当程度利用されているナイロンを表したものと認識するにとどまり,役務の出所を表示するものと認識するとはいえないから,本願商標は,自他役務の識別力を欠くものと認められる。 」
カエルム
(知財高裁2部清水判事、平成29年2月23日)
(2017.2.28. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-02-28 12:13
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