2017年 02月 28日
不競 平成27年(ヨ)22042号 コメダ珈琲差止仮処分事件 |
◆コメダ珈琲がマサキ珈琲に対して店舗使用差止の仮処分を申し立てていた事件。商品等表示に該当、類似性等の要件も満たし、差止認容。
【店舗デザイン、トレードドレス、不正競争防止法2条1項1号、商品等表示、周知性、混同要件、外観、内装、店舗構造、商品自体】
(店舗外観が商品等表示に該当する? -規範-)
「(ア) 店舗外観が商品等表示に該当する場合について
店舗の外観(店舗の外装,店内構造及び内装)は,通常それ自体は営業主体を識別させること(営業の出所の表示)を目的として選択されるものではないが,場合によっては営業主体の店舗イメージを具現することを一つの目的として選択されることがある上,①店舗の外観が客観的に他の同種店舗の外観とは異なる顕著な特徴を有しおり,②当該外観が特定の事業者(その包括承継人を含む。)によって継続的・独占的に使用された期間の長さや,当該外観を含む営業の態様等に関する宣伝の状況などに照らし,需要者において当該外観を有する店舗における営業が特定の事業者の出所を表示するものとして広く認識されるに至ったと認められる場合には,店舗の外観全体が特定の営業主体を識別する(出所を表示する)営業表示性を獲得し,不競法2条1項1号及び2号にいう「商品等表示」に該当するというべきである。 」
(当てはめ)
「 (イ) 債権者表示1の顕著な特徴(前記(ア)①)について
債権者表示1は,別紙「債権者表示1の主要な構成要素」記載(1)①ないし⑥及び(2)①ないし⑥のとおりの特徴が組み合わさることによって一つの店舗建物の外観と
しての一体性が観念でき,統一的な視覚的印象を形成しているということができるところ,これら多数の特徴が全て組み合わさった外観は,建築技術上の機能や効用のみから採用されたものとは到底いえず,むしろ,コメダ珈琲店の標準的な郊外型店舗の店舗イメージとして,来店客が家庭のリビングルームのようにくつろげる柔らかい空間というイメージを具現することを目して選択されたものといえる(前記1(3)ア(ウ))。そのようにして選択された,切妻屋根の下に上から下までせり出した出窓レンガ壁が存在することを始めとする特徴(1)①ないし⑥の組合せから成る外装は,特徴的というにふさわしく,これに,半円アーチ状縁飾り付きパーティションを始めとする特徴(2)①ないし⑥を併有する店内構造及び内装を更に組み合わせると,ますます特徴的といえるのであって,本件において提出された書証(甲123ないし125,乙12,30)等に見られる他の喫茶店の郊外型店舗の外観と対照しても,上記特徴を兼ね備えた外観は,客観的に他の同種店舗の外観とは異なる顕著な特徴を有しているということができる(他との十分な識別力を有しているということもできる。なお,上記特徴を備えた店舗外観に関し,前記1(6)イ(イ)のとおり,需要者の間でコメダ珈琲店の店舗外観が想起されて別紙「インターネット上での指摘」にあるような指摘がされたことも,この点を裏付けるものであるといえる。)。 そして,債権者表示1には,特徴(1)①ないし⑥及び(2)①ないし⑥以外の構成要素も組み合わさっているものの,そのことが上記視覚的印象の形成を妨げるものではない。なお,債権者表示1には,それ自体特徴的な部分とさほど特徴的ではない部分とが含まれているともいえるが,後者について上記視覚的印象の形成に当たって関連性がないとまでいうことはできない一方,債権者が多数の条件を付加することによって保護範囲が狭くなるような限定をしているのであるから,これら多数の条件の組合せによって特定される債権者表示1を見たときに(「コメダ珈琲店」「KOMEDA'S Coffee」という文字部分自体による効果を除いても)その営業主体について「コメダ珈琲店」(債権者)であると認識するのに十分と判断できる以上は,一つの店舗建物の外観として一体性が観念できる債権者表示1のうち,上記のさほど特徴的でない部分を峻別して排除する必要まではないというべきである。
したがって,債権者表示1は,客観的に他の同種店舗の外観とは異なる顕著な特徴を有しているというべきである。 」
(類似性・混同のおそれ)
「(3) 争点3(債権者表示と債務者表示との類似性)について
債権者表示1と債務者表示1とを比較した結果は,別紙「債権者債務者表示比較一覧」記載AないしQ及び別紙「債権者債務者営業態様比較一覧」記載AないしTのとおりであり,ライン飾り(化粧板)の形状及びデザイン,出窓レンガ壁部の形状及び模様,屋根・壁・窓等の位置関係及び色調,店内のボックス席の配置及び半円アーチ状縁飾り付きパーティションの形状など余りに多くの視覚的特徴が同一又は類似していることから,債権者表示1と債務者表示1とが全体として酷似していることは明らかである。外装及び内装の中で店舗の名称がそれぞれ「コメダ珈琲店」「KOMEDA'S Coffee」,「マサキ珈琲」「Masaki's coffee」と表示されているなどの相違点を考慮しても,債権者表示1と債務者表示1とが全体として類似していることを否定することはできない(なお,債務者は,債権者表示1と債務者表示1について幾つかの相違点を指摘するが,印象を変えるには及ばないような点にとどまり,上記類似性を否定するには到底及ばない。)。
(4) 争点4(混同のおそれの有無)について
前記(3)のとおり債権者表示1と債務者表示1とが全体として酷似していること,現に債務者店舗とコメダ珈琲店との関係について問合せ等が多数あったことなどを併せ考慮すると,店舗名等の相違を勘案しても,債務者表示1を使用することは,その使用主体と債権者表示1の出所との間に資本関係や系列関係,提携関係など(系列店,姉妹店などといわれる関係を含む。)の緊密な営業上の関係が存すると誤認混同させるおそれ(いわゆる広義の混同のおそれ)があると認められる。
したがって,債務者表示1の使用により不競法2条1項1号所定の「混同」のおそれが生じるということができる。 」
コメダ、ミノスケ
(東京地裁29部嶋末裁判長、平成28年12月19日)
(2017.2.28. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-02-28 20:41
| 不正競争防止法
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