2017年 03月 23日
意匠 平成28年(ワ)675号 靴底事件(侵害訴訟) |
◆被告製品(靴)の靴底部分が、靴底の部分意匠に類似するかが問題となった事件。類似せず、非侵害。
【部分意匠、侵害訴訟、意§23、類否判断、要部における美感の協津性、基本的構成態様、具体的構成貸与、ソール、部品と完成品】
(類否判断)
「(5) 本件意匠と被告意匠との類似性について
以上を前提に,本件意匠と被告意匠との類否について検討すると,前記認定の差異点のうち,差異点(4)イ(エ)ないし(カ)(A層ないしC層の厚みの比率の差異)は,数値により確かめられる差異であるが,部位による比率の変化の度合いが似ているので,異なる美感をもたらすほどの大きな差異とはいえず,むしろ微差というべきである。
他方,被告意匠は,正面図,背面図,右側面図及び左側面図のいずれにおいても,3層のソールのうちB層とC層の関係が,本件意匠のそれと被告意匠のそれとでは異なり,被告意匠では,C層が下側の連続した2層からはみ出していて,その境目に略逆L字型の直角部分を形成するなど明らかに下の2層の周面とは視覚的連続性を欠いており,加えてC層の側面形状における膨らみが他の層よりも小さいことも,その視覚的印象を強めているが,これらの差異は本件意匠の要部にかかわる部位におけるものである。
そして,その結果,被告意匠は,3層からなるソールのうちC層部分が他の層とは異なる存在感を持ち,それが特徴となって全体に頑丈な印象を与えるものとなっていて,3層のソール全体が一体感を保ち,丸みを帯び柔らかな美感を起こさせる本件意匠とは異なる美感を起こさせているといえる。
なお,原告は,本件意匠と被告意匠の上記差異が,被告製品がアッパーと靴底を糸で縫い付ける構造であることからもたらされたもので,設計上の微差であるように主張するが,視覚を通じて異なる美感を起こさせるものである以上,それが製造工程に由来するものであるからといって無視してよいわけではなく,設計上の微差をいう上記原告主張は失当である。
また本件意匠と被告意匠は基本的構成態様において共通しているが,基本的構成態様は公知意匠にも見られ,少なくとも本件意匠の要部に係るものではないから,需要者の注意を惹くものとはいえない。
したがって,被告意匠は,本件意匠とその要部において異なり,その結果,本件意匠と被告意匠との差異点の印象は,両者の共通点の印象を凌駕し,全体として異なる美感を起こさせるものというべきであるから,被告意匠は,本件意匠に類似するものと認めることはできない。 」
ベル、プレーン、シェル
(大阪地裁21部森崎裁判長、平成29年2月14日)
(2017.3.23. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-03-23 12:31
| 意匠
|
Comments(0)