◆鋼板をクランプする装置の発明に関し、分割要件やサポート要件・実施可能要件が問題となった事件。いずれの要件も違反せず。
【無効審判、審決取消訴訟、分割要件、44条、サポート要件、実施可能要件】
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/699/086699_hanrei.pdf
(分割要件)「 本件発明1の構成要件Hは,原出願明細書中,継手ピッチ19が400mmと600mmのように200mm程度以上の寸法差を有する鋼矢板15の双方を施工可能な鋼矢板圧入引抜機が提供されていなかったという従来技術が有する問題点の理由のうち,クランプ装置に関する問題を解決する手段,すなわち,クランプ装置を構成する複数のクランプ部材の台座への配設箇所を組み替えて,クランプピッチを変更可能とすることにより,クランプする既設の鋼矢板が多様な継手ピッチを有していたとしても,既設の先頭の鋼矢板をクランプ装置でクランプした状態で鋼矢板圧入引抜機を既設の鋼矢板上に定置するという構成を採用したものということができる。 そして,クランプ装置は,チャック装置によって圧入・引抜作業を行う鋼矢板をチャックする前に,既設の鋼矢板をクランプして鋼矢板圧入引抜機を定置するものであり,チャック装置とは別個のものである。原出願明細書には,多様な継手ピッチの鋼矢板に対応可能な汎用性を有する鋼矢板圧入引抜機及び鋼矢板圧入引抜工法を提供するために,従来技術のチャック装置に関する問題及びクランプ装置に関する問題の両方の解決を要することは記載されているが,クランプ装置に関する問題を解決するためにチャック装置に関する問題の解決を要することは,記載されていない。したがって,原出願明細書においては,本件発明1の構成要件Hが採用したクランプ装置に関する問題を解決する手段としての前記構成に,請求項4記載のチャック装置を必須とすることまで記載されているとはいえない。・・・略・・・ ⑹ 小括 以上のとおり,本件特許出願は分割要件に反しないから,新規性・進歩性を肯定した本件審決の結論に誤りはない。なお,本件審決には,本件発明1の構成要件Hが原出願明細書に記載されたものであるか否かについて記載がない。しかし,本件審決が構成要件FからGについて摘示した明細書の箇所が構成要件FからHについて当てはまることを考慮すると,誤記であったものと認められる。よって,取消事由1は,理由がない。 」 技研製作所、コーワン
(知財高裁4部高部判事 平成29年4月18日)
(2017.4.19. 弁理士 鈴木学)