2017年 05月 15日
商標 平成16年(行ケ)216号 VANS靴底形状商標事件(識別力、ちょっと古い) |
◆靴のソールを表す図形商標が3条1項3号に該当するか否かが争われた事件。商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であって3条1項3号に該当する。
【商標、拒絶理由、審決取消訴訟、3条1項3号、商品の形状、スニーカー、ソール、バンズ、製品の一部形状、形状からなる商標、予測し難い特異形態 or 特別な装飾的形態】
(3条1項3号 -規範-)
「 1 取消事由1(本願商標が商標法3条1項3号に該当するとの判断の誤り)について
(1) 商標法3条1項3号所定の商標について商標登録を受けることができないとされた趣旨は,同号所定の商標が商品の特性を表示記述する標章であって,取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから,特定人による独占的使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに,一般的に使用される標章であって,多くの場合自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解される(最高裁昭和54年4月10日第3小法廷判決・裁判集民事126号507頁)。
そして,本来,商品の形状は,商品の機能をより効果的に発揮させたり,看者に与える美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものである。したがって,商品の形状からなる商標は,その形状が同種の商品の用途,機能から予測し難いような特異な形態や特別な印象を与える装飾的形態を備えているものと認められるような場合でない限り,自他商品識別力を欠くものであって,「商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」として,登録を受けることができないというべきである。この点は,東京高裁知的財産専門各部が繰り返し同旨の判示をしているところでもある(近年のものとして,東京高裁平成11年(行ケ)第406号平成12年12月21日第18民事部判決,同平成13年(行ケ)第54号平成13年12月28日第13民事部判決,同平成13年(行ケ)第446号平成14年7月18日第6民事部判決,同平成14年(行ケ)第581号平成15年8月29日第13民事部判決,同平成15年(行ケ)第102号平成15年10月15日第3民事部判決などがある。いずれも最高裁ホームページ参照。)。」
(あてはめ)
「… 以上の認定事実によれば,本願商標は,指定商品である「運動靴,スニーカー」の底面(接地面)の形状を表示する標章からなる商標である。そして,上記①「つ
ま先エリア」及び②「かかとエリア」における連続した菱形状の幾何学的模様,さらに③「中央エリア」の菱形状の幾何学的模様と六角形状の幾何学的模様とが交互に配された模様は,その形態からして,靴のグリップ力という機能をより効果的に発揮させるに資するであろうことは容易に予測し得るところである。
そして,上記各模様が,機能性とは関係なく,ファッション的美感を高める観点からデザイン構成がされたことは,これを直接的に裏付ける証拠はない。もっとも,本件証拠(甲44ないし46,乙1ないし11)によれば,シューズメーカー各社は,靴の底面について,実に様々な形状のものを製造しており,その形状は,主として機能性を追求した結果もたらされたものであると認められるが,必ずしも機能性の追求のみでなく,機能性を損なわない範囲で美感をも追求したものであろうことをも推測し得る。そうすると,本願商標の上記模様による構成についても,機能性の観点のみならず,ファッション的美感を高める観点からもデザインがされたことを推認し得ないではない。
しかしながら,本願商標の上記菱形状の幾何学的模様及び六角形状の幾何学的模様の一つ一つは,それ自体,菱形及び六角形という基本的な図形からなるもので,菱形状の幾何学的模様を連続して配しても,ありふれた形状であるというほかない。また,③「中央エリア」においては,菱形状の幾何学的模様と六角形状の幾何学的模様とが交互に配されて,比較的特徴的ではあるが,独創性が高いとまではいえない。このことに加え,シューズメーカー各社が靴の底面について,実に様々な特徴ある形状のものを製造している実情にも照らせば(甲44ないし46,乙1ないし11),本願商標の形状は,指定商品である「運動靴,スニーカー」の用途,機能から予測し難いような特異な形態や特別な印象を与える装飾的形態を備えているものとは,到底認められず,指定商品の取引者,需要者は,本願商標から,「運動靴,スニーカー」において採用し得る機能又は美感の範囲内のものであると感得し,「運動靴,スニーカー」の底面(接地面)の形状そのものを認識するにとどまるものと認められる。すなわち,本願商標は,自他商品識別力を有するものとは認められず,「商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」であるというべきであって,商標法3条1項3号に該当するものとして,登録は許されない。」
(東京高裁4部塚原判事)
(2017.5.15. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-05-15 19:17
| 商標
|
Comments(0)