2019年 02月 21日
◆立体的商標について ~簡単な歴史的経緯と最近のトピック~ |
◆歴史的経緯
・1996年/平成8年の商標法改正で導入。
◆関連条文
・3条1項3号、4条1項18号
◆内容
・立体商標の分類
①立体的形状+平面商標 ②立体的形状のみ(サインポスト、案内標識) ③立体的形状のみ (商品包装の形状)
◆取扱い
・「商品自体の形状及び包装に関する立体的商標については、原則、…3条1項3号を適用し、使用により出所識別力を獲得したものを商標法3条2項で登録する運用ポリシーとなっている。」(青木、政策学研究、2010)
(基準)
・(a)”個性的であり(市場における唯一性)、新規で次回の購入を検討する際に、標識とするに足りる程度に十分特徴的”→§3①3に該当せず(GuyLianチョコ事件)。
・(b)「商品の用途、機能から予想し難いような特異な形態や特別な印象を与える装飾的形状」→§3①3に該当せず(Pegcil事件、角瓶高裁H15事件)。
・(c)「…予測し得ないような斬新な形状の商品等であったとしても、当該形状が専ら商品等の機能向上の観点から選択されたものであるときには、商標法4条1項18号の趣旨を勘案すれば、商標法3条1項3号に該当するというべきである」(Maglite事件。コカコーラH20事件、ZEMAITIS H20事件も同旨。)
◆審決例・判決例
【査定系】
☞ Pegcil筆記具事件(東高判平11行ケ406)…×
・ゴルフの筆記具、拒絶。
☞ チョコレート(判平 13 行ケ 418)
☞ Muglight(平 18 行ケ 10555)
・3条2項適用で登録。
☞ 角瓶事件( 東高判平 14 行ケ 581)…×
・多少デザインが施されているが通常採用し得る範囲、拒絶(§3条1項3号)。
☞ ひよ子( 東高判平 17 行ケ 10673)
・登録を無効にした知財高裁の判決を不服として上告、最高裁は上告棄却。
☞ フェラガモ・ガンチーニ事件…×
・カバンの留め具、拒絶。
☞ コカ・コーラボトル…◯
・3条2項適用で登録。
・「1957年の国内販売以来、驚異的な販売実績を残し、特徴を印象付ける公告も重ねられ、ブランドシンボルとして認識されている」
☞ ヤクルト容器(東高判平11行ケ474)…◯
・3条2項適用で登録。
☞ Yチェア事件(平22行ケ10253)…◯
・3条2項適用で登録。
☞ ゴルチエ香水容器事件(知財高裁滝沢判事、H23)
・「立体的形状からなる商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは,①当該商標の形状及び当該形状に類似した他の商品等の存否,②当該商標が使用された期間,商品の販売数量,広告宣伝がされた期間及び規模等の使用の実情を総合考慮して判断するべきである」
・「…他に見当たらない特異性があり,強い印象を与える。15年以上にわたって販売され,ファッション誌などに掲載されており,立体的形状が独立して商品識別力を持っている」
【当事者系(侵害訴訟)】
☞ バーキン vs Ginger Bag 事件(平成25(ワ)31446、平成26年5月21日)
・エルメスの高級バッグと2万円ほどのバッグとの類似性が問題となった事件。類似、侵害(商標権侵害、不正競争防止法2条1項1号、2号)。
・「立体商標権についての恐らく初の侵害事件」(泉克幸、新・判例解説Watch2015-8-7)
・立体商標の類否判断も、氷山事件/小僧寿し事件の基準が当てはまる。
・「外観が類似していても、需要者や取引態様等によっては、出所混同のおそれが生じない場合もある。」(茅根、甲南法務)
・「…あくまでパロディ商品であり、商標的使用といえないとの主張や、取引実情を考慮すれば、誤認混同のおそれはないとの主張などが考えられる」(茅根、甲南法務)
【追加(2019-10-1)】
・登録例 商標登録5844513
◆文献
・青木博通、「立体商標制度の基本構造とその解釈-日米欧の比較法的考察-」、2010、知的財産法政策学研究
・茅根豪、「立体商標の類似性判断と著名商標の保護」、甲南法務研究、No.13
・http://www.inpit.go.jp/content/100786732.pdf
by manabu16779
| 2019-02-21 16:56
| 商標
|
Comments(0)