2017年 07月 24日
不競 平成27年(ワ)24688号 テラレット事件(2条1項1号) |
◆プラント設備で用いられる樹脂成形品が周知な商品等表示として保護されるか等が争われた事件。2条1項1号の不正競争に該当、損害賠償約2500万円。
【不正競争防止法2条1項1号、商品の形態、セカンダリミーニング、技術的効果、実用新案権、周知性の立証】
「ア 不競法2条1項1号の趣旨は,周知な商品等表示の有する出所表示機能を保護するため,周知な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自己のものと誤認混同させて顧客を獲得する行為を防止することにより,同法の目的である事業者間の公正な競争を確保することにある。
商品の形態は,商標等と異なり,本来的には商品の出所を表示する目的を有するものではないが,商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有するに至る場合がある。そして,このように商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有し,不競法2条1項1号にいう「商品等表示」に該当するためには,①商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,②その形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用され,又は極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等により(周知性),需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっていることを要すると解するのが相当である。 」
(技術的機能に由来する形態? -規範-)
「(3) 原告商品の形態が技術的機能に由来する形態であるか否かについて
ア 被告は原告商品の形態が充填物としての商品の技術的機能にのみ由来する形態であるから,商品等表示にはなり得ないと主張しているため,この点について判断をする。
イ 上記(2)アのとおり,商品の形態が不競法2条1項1号の「商品等表示に該当する場合があるとしても,商品の形態が商品の技術的な機能及び効用を実現するために他の形態を選択する余地のない不可避的な構成に由来する場合,そのような商品の形態自体が「商品等表示」に当たるとすると,当該形態を有する商品の販売が一切禁止されることになり,結果的に,特許権等の産業財産権制度によることなく,当該形態によって実現される技術的な機能及び効用を奏する商品の販売を特定の事業者に独占させることにつながり,しかも,不正競争行為の禁止には時間制限が設けられていないことから,上記独占状態が事実上永続することになる。したがって,上記のような商品の形態に「商品等表示」該当性を認めると,不競法2条1項1号の趣旨である周知な商品等表示の有する出所表示機能の保護にとどまらず,商品の技術的機能及び効用を第三者が商品として利用することまで許されなくなり,それは,当該商品についての事業者間の公正な競争を制約することにほかならず,かえって不競法の目的に反する結果を招くことになる。
他方,商品の形態が商品の技術的な機能及び効用に由来するものであっても,他の形態を選択する余地がある場合は,そのような商品の形態が「商品等表示」に当たるとして同形態を有する商品の販売が禁止されても,他の形態に変更することにより同一の機能及び効能を奏する商品を販売することは可能であり,上記のような弊害は生じない。
そうすると,商品の形態が商品の技術的機能及び効用を実現するために他の形態を選択する余地のない不可避的な構成に由来する場合には,「商品等表示」に該当しないものと解されるものの,商品の形態が商品の技術的機能及び効用に由来するものであっても,他の形態を選択する余地がある場合は,当該商品の形態につき,上記(2)アの特別顕著性及び周知性が認められる限り,「商品等表示」に該当するものと解するのが相当である。 」
(あてはめ)
「…そうすると,原告商品は上記①から⑤の特徴を満たすため,一定の空間率や表面積を備えるように設計されているという点で,原告商品の形態が原告商品の技術的な機能及び効用に由来するものであるといえるものの,充填塔におけるガス吸収操作などの機能・効用を果たすという点では,他の形態を選択する余地が十分にあるから,商品の形態が商品の技術的な機能及び効用に由来するものであっても他の形態を選択する余地がある場合に該当するというべきである。 」
(実用新案権による独占状態をどう考える?)
「(4) 実用新案権による独占状態に由来する周知性か否かについて ア また,被告は,本件における原告の周知性の主張は,実用新案権1ない し3の存在による独占状態に基づく周知性を主張しているにすぎないこと,本件において「第三者の同種競合製品が市場に投入されて相当期間が経過した」わけでもないこと,日進化成が,遅くとも平成20年2月5日には原告商品と同一の形態を有するプラスチック製充填物を販売しており(乙6,乙7),少なくとも実用新案権3の存続期間が満了した後は,独占的な販売状態にあったとは認められないことを主張しているため,この点について判断をする。
イ 特許権や実用新案権等の知的財産権の存在により独占状態が生じ,これに伴って周知性ないし著名性が生じるのはある意味では当然のことであり,これに基づき生じた周知性だけを根拠に不競法の適用を認めることは,結局,知的財産権の存続期間経過後も,第三者によるその利用を妨げてしまうことに等しく,そのような事態が,価値ある情報の提供に対する対価として,その利用の一定期間の独占を認め,期間経過後は万人にその利用を認めることにより,産業の発達に寄与するという,特許法等の目的に反することは明らかである。もっとも,このように,周知性ないし著名性が知的財産権に基づく独占により生じた場合でも,知的財産権の存続期間が経 過した後相当期間が経過して,第三者が同種競合製品をもって市場に参入する機会があったと評価し得る場合など,知的財産権を有していたことに基づく独占状態の影響が払拭された後で,なお原告製品の形状が出所を表示するものとして周知ないし著名であるとの事情が認められる場合であれば,何ら上記特許法等の目的に反することにはならないから,不競法2条 1項1号の適用があるものと解するのが相当である。 」
月島環境エンジニアリング、マツイマシン
(東京地裁40部東海林裁判長、平成29年6月28日)
(2017.7.24. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-07-24 20:11
| 不正競争防止法
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