2017年 08月 24日
特許 平成28年(行ケ)10269号 羅漢果エキス甘味料事件(サポート要件) |
◆複数の成分の合計含有量をクレームに記載した甘味料の発明に関し、サポート要件が問題となった事件。サポート要件満たす。
【36条6項1号、パラメータ、数値限定、全範囲について課題解決、食品特許、無効審判、審決取消訴訟】
(サポート要件)
「… (2) 前記1(2)のとおり,本件発明は,ショ糖に代わる甘味料,特に低エネルギーで,摂取後に血液中の血糖値及びインスリン濃度に影響を及ぼさない甘味料の提
供を課題とするものであり,これを解決するために,本件4成分の合計含有量が35重量%以上である羅漢果エキスという構成を採用したものである。
(3) そして,前記1(1)の本件明細書の記載のうち,実施例1の記載によると,羅漢果の果実から分画及び精製した本件4成分に関し,いずれも1成分のみを高純度で含有する水溶液(モグロサイドⅤは純度97.3%,11-オキソ-モグロサイドⅤは純度99.3%,モグロサイドⅠⅤは純度95.5%,シアメノサイドⅠは純度97.4%。)について,10%ショ糖水溶液と同等の甘味強度を得るために必要な濃度は,モグロサイドⅤでは0.03重量%,11-オキソ-モグロサイドⅤでは0.15重量%,モグロサイドⅠⅤでは0.04重量%,シアメノサイドⅠでは0.02重量%であること,したがって,モグロサイドVはショ糖の約330倍,11-オキソ-モグロサイドⅤはショ糖の約70倍,モグロサイドⅠⅤはショ糖の約250倍,シアメノサイドⅠはショ糖の約500倍の甘味強度を有するとされ,ショ糖に比し非常に甘味強度が強いことが開示されている…。
…略…
本件明細書に接した当業者は,上記開示事項から,本件4成分の高純度品(モグロサイドⅤは純度97.3%,11-オキソ-モグロサイドⅤは純度99.3%,モグロサイドⅠⅤは純度95.5%,シアメノサイドⅠは純度97.4%。)は,いずれも,ショ糖に比して非常に甘味強度が強いこと(ショ糖よりも少量で,ショ糖と同等の甘味強度を得ることができること)に加え,甘味質としても,本件味覚9要素のいずれの要素についても,ショ糖との乖離の程度は小さく,ショ糖と類似した優れた甘味質を有すること,したがって,本件4成分は,いずれも,ショ糖に比して甘味強度が強く,本件味覚9要素のいずれにおいてもショ糖との乖離の程度は小さく,ショ糖と類似した優れた甘味質を有することを理解することができる。
…略…
そうすると,本件明細書には,4成分合計含有量が35.10重量%~60.80重量%であるサンプルH~Jが,ショ糖の甘味質と類似した優れた甘味質を示す水溶液であることが開示されている上,4成分合計含有量が60.80重量%を超える範囲においては,本件4成分のいずれかを増加させることになるところ,前記(3)のとおり,本件4成分は,いずれも,本件味覚9要素のいずれにおいてもショ糖との乖離の程度は小さく,ショ糖と類似した優れた甘味質を有することが開示されているから,本件明細書に接した当業者は,4成分合計含有量が35重量%以上の羅漢果エキスは,ショ糖よりも少量で,ショ糖と同等の甘味強度を得ることができ,ショ糖と類似した優れた甘味質を示すものと理解することができる。
したがって,本件特許の請求項2に記載された本件発明は,本件明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり,サポート要件に適合するものと認められる。 」
FONTEC R&D、サラヤ
(知財高裁2部森判事、平成29年8月8日)
(2017.8.24. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-08-24 20:16
| 特許裁判例
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