2017年 09月 12日
特許 平成28年(ワ)13239号 オルタネータ事件(侵害訴訟) |
◆オルタネータの放熱構造に関し特許権侵害が争われた件。文言侵害、均等侵害不成立。
【技術的範囲、文言侵害、均等侵害、特許法70条、直接接する】
(構成要件充足性)
「4 争点⑴イ(構成要件1H「前記流体通路(17)内に配置された複数個の冷却フィン(18)」の充足性(文言侵害,均等侵害))について
⑴ 文言侵害について
ア 構成要件1Hの「冷却フィン(18)」は,本件発明1の特許請求の範囲の記載上,①「熱放散ブリッジ(16)」の底面にあること,②「前記流体通路(17)」内に配置されていることが必要である。上記②に関し,「前記流体通路(17)」は,「前記」と記載され,これ以前の「流体通路」に相当するものを引用していること,構成要件1Gの「冷却流体通路(17)」と同じ番号が付されていることに照らすと,当該「冷却流体通路(17)」を指すものと解される。そして,その意義は,前記3⑵のとおり,熱放散ブリッジの後部軸受けの方を向く底面を一方の長手方向壁とし,後部軸受けを他方の各長手方向壁とする空間であり,冷却流体が流れるその他の空間は含まれない。そうすると,「冷却フィン(18)」は,「熱放散ブリッジ(16)」に形成されて「冷却流体通路(17)」に配置される必要があると解される。
イ 上記「冷却フィン(18)」に相当する被告製品の冷却フィンは,前記前提事実⑷(構成1h,被告製品写真1及び2)のとおり,「熱放散ブリッジ(16)」に相当する熱放散部材に形成され,上側ベアリングの開口部に対応した部分に配置されている。しかし,被告製品の上側ベアリングの開口部は,前記3⑷のとおり,「冷却流体通路(17)」に当たらない。したがって,被告製品の冷却フィンは構成要件1Hの「前記流体通路(17)内に配置された」を充足しない。
⑵ 均等侵害について
ア 原告は,被告製品のフィンが「前記流体通路(17)内に配置」されていないという相違点があるとしても,被告製品は本件発明1の構成と均等なものとして,本件発明1の技術的範囲に属するというべきであると主張する。被告製品が本件発明1の構成と均等であるというためには,特許請求の範囲に記載された構成中被告製品と異なる部分が特許発明の本質的部分でないことが必要である。
イ そこで本件発明1の本質的部分につき検討する。
本件明細書1における背景技術,発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段の記載(前記1⑵)を参酌すると,前記1⑶のとおり,本件発明1は,熱放散ブリッジにフィンを設け,これに冷却空気を触れさせて電気部品の冷却を図る構成につき,熱放散ブリッジと後部軸受けの間に冷却流体通路を設けて冷却空気を循環させることとし,当該通路内に冷却フィンを設けるオルタネータ/スタータの構成とすることによって,熱放散ブリッジにスロットが設けられない場合であっても十分に熱放散ブリッジを冷却させることができる効果を生じさせることとしたというものである。このことに照らすと,冷却流体の通路及び冷却フィンの配置について上記構成を採用したことに本件発明1の意義があるということができるから,冷却フィンがどこに配置されるかを含めたその配置は,本件発明1の本質的要素に含まれると解するのが相当である。
そうすると,被告製品において冷却フィンが冷却流体通路でなく,熱放散部材の底面であって上側ベアリングの開口部と対応する部分に配置されている構成は,本件発明1と本質的部分において相違するというべきである。したがって,被告製品が本件発明1の構成と均等であるということはできない。 」
ヴァレオ・エキプマン・エレクトリクモトゥール 、三菱電機
(東京地裁46部柴田裁判長、平成29年8月31日)
(2017.9.12. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-09-12 12:37
| 特許裁判例
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