2017年 10月 05日
不競 平成29年(ネ)10051 キャバクラWynnドメイン不正取得事件(控訴審) |
◆横浜のキャバクラがドメイン名「WYNN.CO.JP」を取得したことが、米国の ウィンリゾート社との関係でドメインの不正取得に該当するか否かが問題となった事件。2条1項13号の不正競争に該当する。
◆横浜地裁 平成28年(ワ)11379号
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/664/086664_hanrei.pdf
【ドメイン不正取得、2条1項13号(旧2条1項12号)、特定商品等表示、図利加害、ラスベガス、Wynnリゾート、日本知的財産仲裁センター、ドメイン名紛争処理】
◆知財高裁 平成29年(ネ)10051
(図利加害目的について)
「2 当審における控訴人の主張に対する判断
控訴人は,当審において,「Wynn」を店名に使用した経緯を明らかにした上で,「Wynn」にはそもそも周知性がなく,控訴人は店名に「Wynn」を使用することで被控訴人の営業と誤認混同を生じさせた事実がないにもかかわらず,本件ドメイン名を使用するに当たって不正競争防止法2条1項13号にいう「不正の利益を得る目的」があったと認定した原審の判断には誤りがあるなどと主張する。
しかしながら,前記引用に係る原判決の認定事実のとおり,Wynn ブランドは,アメリカ合衆国のラスベガスの美的,文化的なレベルを上げた功労者として世界的に高い評価を受けている著名人の名前に由来するものであり,我が国においても数多くの旅行雑誌等において取り上げられていることからすれば,Wynn ブランドは,我が国においても高級感のあるブランドとして,少なくとも高級志向の需要者の間では周知となっていたものと認められる。これに対して,控訴人は,当審に至って初めて「Wynn」を店名に使用した経緯を明らかにしたところ,控訴人代表者自身もラスベガスに旅行するに当たり「ウィン・ラスベガス」を選んで同所に宿泊しているのであるから,かえって,このような事情も,Wynn ブランドの周知性を裏付ける一事情となるというべきである。そうすると,「Wynn」が周知性を欠くとする控訴人の主張は,前提を欠くというほかない。
また,不正競争防止法2条1項13号は,同項1号とは異なり,混同を生じさせることを要件とするものではないから,仮に控訴人が店名に「Wynn」を使用するこ
とで被控訴人の営業と誤認混同を生じさせた事実がないとしても,前記判断を左右するものではない。かえって,上記のとおり,控訴人が「Wynn」を店名に使用した経緯を明らかにしたところによれば,控訴人代表者は,「ウィン・ラスベガス」に宿泊して接した「Wynn ロゴマーク」を気に入ったことから,これとほぼ同一の控訴人標章を作成したことが認められるのであって,このような認定事実によれば,控訴人店舗の店名につき,客層が相応に高いクラブに相応しい高級感のあるものにするために,自ら宿泊して体験した「ウィン・ラスベガス」の「Wynn ロゴマーク」に係るブランドの高級感を不当に利用して,控訴人標章を作成するとともに本件ドメイン名を使用したことは明らかである。
そのほかに控訴人の当審における主張を改めて十分検討しても,「Wynn ロゴマーク」の周知性に加えて,控訴人が「Wynn」を店名に使用した経緯を踏まえると,控訴人が本件ドメイン名を使用等する行為には,少なくとも,「不正の利用を得る目的」があったと認めるのが相当であり,上記主張は,前記判断を左右するに至らい。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。 」
(知財高裁1部清水判事、平成29年9月27日)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/664/086664_hanrei.pdf
(図利加害目的について)
「イ 以上の諸事情,とりわけ,①Wynnブランドが,既に原告標章の使用開始時期(平成22年11月頃)には,Wynnブランドのリゾート施設事業が行われている地域はもとより,我が国においても,海外旅行やホテル,リゾート施設等に関心を有する需要者の間において周知であったこと,②「Wynn」なる名称はありふれたものではないところ,原告があえてそのような名称を原告店舗の表示や本件ドメイン名に採用するに至った正当な理由は見受けられないこと,③原告が使用する原告標章の外観は,Wynnロゴマークに極めて類似するものであること,④被告Wynnグループが展開するホテルは大規模な高級リゾート施設として世界的に高い評価を受けているところ,原告が営む原告店舗はそれとは全く異なるいわゆるキャバクラ店舗であること等の事情に照らせば,原告は,被告WynnグループのWynnブランドが有する高い知名度等を利用して自己の利益を不当に図ると共に,Wynnブランドが有する高い評価を希釈化して同ブランドの価値を害する目的を有していたものと評価せざるを得ないから,原告には,不正競争防止法2条1項13号所定の「不正の利益を得る目的」ないし「他人に損害を加える目的」があったものと認められる。」
株式会社クロエ、 ウィンリゾーツホールディングス
(東京地裁47部沖中裁判長、平成29年3月14日)
(2017.4.6. 弁理士 鈴木学)
(2017.10.5. 追記)
by manabu16779
| 2017-10-05 14:36
| 不正競争防止法
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