2017年 10月 19日
特許 平成29年(ネ)10047号 道路レーン切換えシステム事件(控訴審) |
◆出願人から特許出願の依頼を受けた弁理士が、アイデアシートに記載の事項を明細書に書いていなかった等を理由に訴えられた事件。知財高裁でも不法行為に該当せずと判断。
◆東京地裁 平成28年(ワ)35838号
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/659/086659_hanrei.pdf
【特許出願、弁理士、依頼、応答義務違反、民709条】
◆知財高裁 平成29年(ネ)10047号
「2 当審における付加判断(第1請求及び第2請求に関し)
控訴理由に鑑み,必要な限度で判断を加える。
控訴人は,控訴理由書その他当審における提出書面において,①特許請求の範囲(請求項)に「進行方向別通行区分の切り替え式」なる発明の記載がない(請求項10はこれに当たらない。同発明を請求項に記載するよう補正を求めたが行われていない。),②同発明について特許庁から拒絶されていたことの証明がない(したがって,同発明が特許庁から拒絶されているというのは虚偽である。),③発明の名称の変更が正しく行われていない(控訴人が要求したとおりに補正が行われていない。)などと出願人代理人としての被控訴人の行為につき不満を述べて,被控訴人に対する損害賠償請求等が認められるべき旨主張する(また,控訴人は,第1請求の請求原因事実として,「(被控訴人が)Aの評価を含めた類似のみの削除の補正に応じなかった事」を追加するとも主張する。)。
しかしながら,控訴人の主張はいずれも失当である。 すなわち,前記認定の事実関係(原判決「事実及び理由」第3の1(1)ア(ア)ないし(カ)に掲記の各事実)によれば,本件特許出願の出願経過において特許庁に提出された書面は,いずれも控訴人と被控訴人との間で事前に記載すべき内容を確認し,記載内容につき合意をした上で,被控訴人が出願人代理人として提出したものと認められるから,同書面に記載のない(反映されていない)事項は,もとより当事者間の合意内容に含まれなかったとみるのが相当である。
したがって,仮に控訴人の思い描く発明の内容や名称が結果的には本件特許出願に反映されなかったとしても(また,たとえ控訴人の思いどおりに補正が行われなかったとしても),それは控訴人も同意した上での結果であったといわざるを得ないのであって,被控訴人に何ら法律上又は契約上の義務違反があるとは認められない。
また,前記のとおり,被控訴人は,出願人代理人として,控訴人と事前に確認して合意した内容に基づき本件特許出願を行い,その結果,特許庁から,請求項全部につき拒絶理由がある旨の通知(甲2の2)を受けているのであるから,仮に請求項10の記載内容が控訴人の考える「進行方向別通行区分の切り替え式」なる発明とは相違していた(すなわち,同発明の内容に関する控訴人と被控訴人の認識にそごがあった)としても,被控訴人が,同発明が請求項10に記載したものであるとの前提(認識)の下に,控訴人に対し,平成28年6月13日付け文書(甲4の2)をもって,特許庁から特許出願を拒絶すべきものとされている旨伝えたことが直ちに事実に反するとはいえないし,ましてや詐欺その他の不法行為に当たるということはできない(被控訴人としては,上記のとおり当事者間の合意に基づいて本件特許出願を行っている以上,控訴人が権利の取得を希望する発明については,全て請求項に反映されていると認識するのが当然である。そうである以上,被控訴人にあえて虚偽の事実を伝える意図があったとは到底認められないし,上記のように伝えたことに瑕疵があるともいえない。)。
よって,これと同旨をいう原判決の認定判断は相当であり,上記控訴人の主張(追加的主張を含む。)はいずれも当たらない。 」
(知財高裁3部鶴岡判事、平成29年9月27日)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/659/086659_hanrei.pdf
(応答義務違反)
「イ 上記アの事実関係によれば,①本件特許出願に係る書類及び本件拒絶理由通知に対する手続補正書ないし意見書の作成に当たり,原告が表明した意向を受けて被告が書面の案を作成して説明を行い,これを受けて原告が意向を改めるなどした結果,本件特許出願に係る書類につき平成28年2月13日頃に,上記手続補正書及び意見書の内容につき同年9月11日にそれぞれ原告と被告との間で合意した内容を原告が本件委任契約に基づき被告に対して記載を求める内容として確定させたこと,②被告が上記各合意内容どおりの内容を記載した上記各文書を特許庁に対して提出したことが明らかであるから,被告が特許庁に対して提出した上記各文書に記載のないものは,原告が被告に対して記載を求めた内容に含まれないとみるべきである。そうすると,アイデア書(甲5)の内容,モータ駆動部に関する文章及び原告の主張する前記補正内容につき上記各文書に記載されていない部分があるとしても,被告がこれを記載しなかったことが応答ないし補正義務違反等に当たるとは解されない。 」
(東京地裁46部長谷川裁判長、平成29年3月23日)
(2017.4.3. 弁理士 鈴木学)
(2017.10.19. 追記)
by manabu16779
| 2017-10-19 13:02
| 特許裁判例
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