2017年 10月 27日
不競 平成29年(ネ)10020号 プログラマ開発データ持出し事件(営業秘密、競合避止) |
◆パチスロ等の開発を業務としていたプログラマが失踪・競合他社への就職をしていた件で、競合避止義務違反等と判断された事件。
【営業秘密、不正競争2条1項4号、機密保持契約、秘密保持契約、競合避止、業務放棄】
(業務放棄・競合避止義務)
「キ 被控訴人は,平成25年12月29日,控訴人が管理する被控訴人の連絡先情報を削除した上,業務に関する引継ぎを何ら行うことなく失踪し,その後も控訴人に連絡を取らないまま,平成26年4月1日には,パチスロ等の開発を業務とするB社に就職し,平成27年11月15日に退職するまで,プログラマーとしてパチスロの開発業務に従事した。
⑵ 検討
ア 業務放棄について
前記1で述べたとおり,平成25年12月29日当時,控訴人と被控訴人の間に存在した契約は雇用契約(期間の定めのないもの)であると解されるから,被控訴人は控訴人に対し,同契約に基づき,控訴人の指揮命令に従って所定の労務を提供すべき義務を負うものといえる。具体的には,その当時,被控訴人は,控訴人の指示に基づき,A社ス案件のサブメインの開発業務及びC社ア案件のサブメインの開発業務に従事し,その作業が継続中であったのであり,更に,平成26年1月7日からはC社デバッグ案件に係る業務を行うよう控訴人から指示されていたのであるから,被控訴人は,控訴人に対し,平成26年1月以降も,これらの案件(本件案件)の開発業務に係る労務を提供すべき義務を負っていたものといえる。
また,雇用契約において,労働者は,使用者に対し,上記労務提供義務に付随して,当該労務の提供を誠実に行い,使用者の正当な利益を不当に侵害してはならない義務を負うものといえるところ,このような労働者の誠実義務からすれば,被控訴人が職を辞して労務の提供を停止するに当たっては,使用者である控訴人に対し,所定の予告期間を置いてその旨の申入れを行うとともに,自らが担当していた控訴人の業務の遂行に支障が生じることのないよう適切な引継ぎ(それまでの成果物の引渡しや業務継続に必要な情報の提供など)を行うべき義務を負っていたものというべきである。
しかるところ,被控訴人は,平成25年12月29日,控訴人代表者らに対し自己の担当業務に関する何らの引継ぎもしないまま突然失踪し,以後,控訴人の業務を全く行わず,控訴人に何らの連絡もしなかったのであるから,このような被控訴人の行為が,控訴人との雇用契約に基づく上記労務提供義務及び誠実義務(労務の提供を停止するに当たって,所定の手順を踏み,適切な引継ぎを行う義務)に違反し,債務不履行を構成することは明らかであり,被控訴人は,これによって控訴人に生じた損害を賠償する義務を負う。
…略…
イ 競業避止義務違反について
前記2(1)で述べたとおり,被控訴人は控訴人に対し,本件競業避止条項に基づき,控訴人と被控訴人との雇用契約期間中及びその終了後12か月の間,控訴人の業務内容と同種の行為を自ら行い,又は第三者をして行わせない義務を負うものといえる。
しかるところ,被控訴人は,平成26年4月1日から平成27年11月15日まで,控訴人の業務内容と同様のパチスロ等の開発を業務とするB社で就労し,プログラマーとしてパチスロの開発業務に従事していたのであり,他方,上記雇用契約の終了時期が前記2(2)のとおりであると認められることからすれば,被控訴人がB社で就労していた時期に,被控訴人が上記義務を負っていたことは明らかである。
したがって,被控訴人の上記就労が,控訴人との雇用契約に付随する競業避止義務に違反し,債務不履行に当たることは明らかであり,被控訴人は,これによって控訴人に生じた損害を賠償する義務を負う。 」
(知財高裁3部鶴岡判事、平成29年9月13日)
(2017.10.27. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2017-10-27 19:52
| 民法・民事訴訟法
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