2020年 11月 17日
商標 平成23年(行ケ)10326号 アディダス3本線事件(4本ライン) |
◆アディダスの3本ラインとニッセンの4本ラインとの間の出所混同のおそれが問題となった事件。出所混同おそれ有り、4条1項15号該当。
【4条1項15号、adidas、スリーストライプ、三本線、著名、取引実情、外観上の類否、商品等表示、無効審判、審決取消訴訟】
(4条1項15号についての判断)
「(3) 判断
ア 上記(2)イに認定した事実によれば,運動靴の甲の両側面(靴底とアイレットステイを結ぶ位置)にサイドラインとして付されたスリーストライプス商標(細部のデザインの相違を捨象した3本線を基調とする商標)は,スリーストライプという語が需要者の間に用語として定着していたかはともかく,本件商標の登録出願時である平成17年5月25日及び登録査定時である同年10月28日において,我が国において運動靴の取引者,需要者に,3本線商標ないしスリーストライプス商標といえばアディダス商品を想起するに至る程度に,アディダスの運動靴を表示するものとして著名であったものと認められる。スリーストライプス商標の具体的な構成には,使用時期や製品によって,ストライプの長短,幅,間隔,傾斜角度,輪郭線の形状等,細部のデザインが異なる様々なものが存在するが,これら細部の相違は,スリーストライプス商標の基本的な構成である3本のストライプが与える印象と比較して,看者に異なった印象を与えるほどのものではないというべきである。
イ 本件商標は,上記(2)アのとおり,細長い4本の台形様ストライプからなるものであるが,その指定商品「履物,運動用特殊靴」に属する運動靴においては,同ウに認定したとおり,靴の甲の側面に商標を付す表示態様が多く採用され,そのような態様で付された場合,商標の上下両端部における構成が視認しにくく,また,4本線の部分とそれらの間に存在する3つの空白部分につき,4本線か3本線かが紛れる場合が見受けられるのであり,その場合,参考図(別紙記載11a,b)のような構成のものと区別することが困難であるともいえる。そして,4本線商標とスリーストライプス商標との相異の程度について,別の角度から検討すると,本件商標の構成と同様に4本の長短のある台形様図形をやや傾けて互いに平行に等間隔で配置してなる4本線商標(引用商標1,2の図形部分に似た白色の4本線のもの1件,黒色の4本線のもの3件)の事例について,特許庁において,アディダスの業務に係る商品と出所混同を生ずるおそれがあり,商標法4条1項15号に該当するとの認定がなされ,登録無効審決又は登録取消決定が確定していることが認められる(甲93の1,2,甲94,122~127)。
そうすると,運動靴の甲の側面に付された本件商標に接した取引者,需要者は,本件商標の上下両端部における構成が視認しにくい場合や,本件商標から,4本の細長いストライプではなく,それらの間に存在する空白部分を3本のストライプと認識する場合などがあり,これらのことから,3本のストライプから著名なアディダスのスリーストライプス商標を想起するものと認められる。また,4本線商標かスリーストライプス商標かという相異についても,靴の甲の側面に商標として付された場合,さほど大きな区別のメルクマールになるものとはいえない。
さらに,本件商標は,4本線商標というのみならず,台形様図形の向かい合う2辺の各々に沿って表示された2本のステッチ状の模様とその間に均等間隔に表示された多数の小さな丸点が描かれている点において,引用商標と異なることは確かであるが,アディダスのスリーストライプス商標の付された運動靴において,甲の両側面に付されたスリーストライプス商標の各ストライプの向かいあう2つの長辺に沿ってその内側に2本のステッチ状の模様(これは商標を靴の甲の側面に付す場合の縫い目のようにも見える。)のあるものが多数存在し,3本のストライプ間の中央部又はストライプ中央部にストライプに沿って直線上に多数のパンチング(小さな丸い孔)模様のあるものも存在することを考慮すると,本件商標の「2本のステッチ状の模様」及び「多数の小さな丸点」は,本件商標の構成において,格別の出所識別機能を発揮するものと認めることはできない。
ウ 以上検討したところによれば,単に本件商標と引用各商標との外観上の類否を論ずるだけでは足りないのであって,本件商標と引用各商標(アディダスの著名商標)との構成態様より受ける印象及び両商標が使用される指定商品の取引の実情等を総合勘案すると,本件商標を指定商品「履物,運動用特殊靴」に使用したときは,その取引者,需要者において,当該商品がアディダスの業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものと認められる。したがって,本件商標は,商標法4条1項15号に該当し,原告ら主張の取消事由1は理由があるから,その余の点について判断するまでもなく,審決は違法として取り消されるべきである。」
平成24年11月15日判決言渡
(2020.11.17. 弁理士 鈴木学)
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by manabu16779
| 2020-11-17 20:14
| 商標
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