2015年 11月 05日
特許 平成27年(ワ)第1025号 ノンアルコールビール特許侵害訴訟事件 |
◆サントリーvsアサヒのノンアルビール特許訴訟(ドライゼロ販売差止事件)。サントリー特許は進歩性無しと判断され差止め認められず。高裁で和解。
【無効理由、進歩性、動機付け、顕著な効果、特§104の3、侵害訴訟、ドライゼロ、和解】
「上記事実関係によれば,公然実施発明1に接した当業者において飲み応えが乏しいとの問題があると認識することが明らかであり,これを改善するための手段として,エキス分の添加という方法を採用することは容易であったと認められる。そして,その添加によりエキス分の総量は当然に増加するところ,公然実施発明1の0.39重量%を0.5重量%以上とすることが困難であるとはうかがわれない。そうすると,相違点に係る本件発明の構成は当業者であれば容易に想到し得る事項であると解すべきである。
なお,飲料中のエキス分の総量を増加させた場合にはpH及び糖質の含量が変化すると考えられるが,エキス分には糖質由来のものとそれ以外のものがあり(本件明細書の段落【0020】,【0033】参照),pHにも多様のものがあると解されることに照らすと,公然実施発明1にエキス分を適宜(例えば,非糖質由来で酸性又は中性のものを)加えてその総量を0.5重量以上としつつ,pH及び糖質の含量を公然実施発明1と同程度のの(本件発明の特許請求の範囲に記載の各数値範囲を超えないもの)とすることに困難性はないと解される。
ウ これに対し,原告は,①公然実施発明1については,消費者の満足度が高く,飲み応えに関する課題はなかったこと,②飲み応え感を付与する方法としてエキス分の総量に着目する動機付けがないこと,③公然実施発明1は,トリプルゼロ(アルコール,カロリー及び糖質のゼロ)を商品コンセプトとし,エキス分が薄いことを特徴としていたから,エキス分を増加させることは考え難いこと,④本件発明には公然実施発明1から予測できない顕著な効果があることを理由に,本件発明に進歩性がある旨主張するが,以下のとおり,いずれも採用することができない。
①について、公然実施発明1に対する消費者の評価は前記ア(ア)のとおりであり,飲み応えに乏しいとの意見もあったから,当業者(原告に限らない。)において公然実施発明1より飲み応えが高いノンアルコールのビールテイスト飲料を開発することの動機付けはあったと考えられる。
②について,ノンアルコールのビールテイスト飲料につき飲み応え感を付与するために各種のエキス分を添加する技術が周知であったことは前記ア(イ)及び(ウ)のとおりであり、これに伴いエキス分の総量が増加すること当然に想定されるということができる。
③について,公然実施発明1の商品コンセプトは,アルコール,カロリー及び糖質がゼロであることであり(乙4),エキス分には糖質に由来しないものがあるから(上記イ),エキス分の総量を増加させることが上記コンセプトの破壊につながるとは認められない。
④について,エキス分の増加により飲み応えが向上することが周知であったことは前記ア(イ)及び(ウ)のとおりであるから,本件発明が公然実施発明1から予測し得る範囲を超えた顕著な効果を奏するということはできない。
(3)小括
以上によれば,本件発明は公然実施発明1に基づいて容易に想到することができたから,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められる(特許法123条1項2号)。」
サントリー、アサヒ
(東京地裁46部長谷川裁判長)
◆知財高裁
・和解 (2016年7月20日、高部裁判長)
by manabu16779
| 2015-11-05 18:59
| 特許裁判例
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