2016年 01月 22日
特許 平成26(ワ)29478 ソルダペースト組成物侵害訴訟 |
◆ソルダペースト組成物の特許に関し、無効理由(進歩性欠如)があるとして権利行使が制限された事件。
【特許法104条の3、進歩性、無効理由、動機付け、有利な効果】
「 相違点1-②(分子量の限定)の容易想到性
…本件発明は,無鉛系のはんだ粉末を含有するソルダペーストを用いたリフローはんだ付け方法においては,鉛系のはんだ粉末の場合に比し,加熱熱量を増やす必要があり,これによりフラックスが酸化して熱劣化を起こしやすいという問題があったので,これを解決するため,分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物からなる酸化防止剤を含有させるとの構成を採用したものである(甲2。段落【0003】~【0005】)。ただし,本件明細書には,分子量500以上の上記化合物からなる酸化防止剤を含有させた実施例2例と酸化防止剤を含有させない比較例が記載されているのみであり(同【0013】~【0016】),上記分子量が500以上である場合と500未満である場合の効果を比較した例は記載されていない。
… 分子量が500以上の酸化防止剤が複数知られていたことに照らすと,分子量の下限値を500とすることについても,格別困難であったとは認められない。そうすると,相違点1-②に係る本件発明の構成は当業者であれば容易に想到し得る事項であると解すべきである。
ウ これに対し,原告は,乙1公報には分子量のみに着目して分子量の大きな酸化防止剤を用いることの記載や示唆がないから相違点1-②に係る本件発明の構成に容易に想到することはない旨主張する。
そこで判断するに,上記イで説示したとおり,無鉛系はんだ粉末を含有するソルダペーストにはリフロー時の高温におけるはんだの酸化等の周知の課題があったところ,この課題を解決するために分子量の大きなフェノール系化合物を用いることが有利であることが知られていたから,乙1公報に酸化防止剤の分子量に言及する記載がなかったとしても,無鉛系はんだ粉末を用いたソルダペーストについて分子量の大きな酸化防止剤を用いる動機付けがあったと認められる。したがって,原告の上記主張は採用することができない。
… 原告による上記実験結果が適正なものであるとしても,本件発明の効果は当業者において予測し得る範囲のものと解されるから,原告の上記主張を採用することはできない。
小括
以上によれば,本件発明は乙1発明に基づいて容易に想到することができたと認められるから,原告は被告に対して本件特許権を行使することができない。 」
◆Memo
・引用文献に開示示唆が無くても周知の課題、一般的課題の場合には動機付け有りと判断。
・課題およびその解決手段の認定。
(東京地裁 長谷川裁判長)
(2016.1.22. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-01-22 13:49
| 特許裁判例
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