2016年 01月 29日
特許 平成27(行ケ)10028 シャープ照明装置事件 |
◆照明装置の特許権に対する無効審判の控訴審。知財高裁でも進歩性有りと判断。
【進歩性、§29②、動機付け、審決取消訴訟での新たな証拠提出】
・進歩性判断
「 (3) 相違点2の容易想到性について
ア 前記(1)のとおり,引用発明には,照明モジュール100に必ず係止孔を設けなければならない理由はないから,引用発明において,照明モジュール100に係止孔を設ける積極的な動機付けがない。
イ 仮に,引用発明において,照明モジュール100に係止孔を設ける動機付けがあったとしても,本件発明は,前記1(2)のとおり,係止孔を基板の端部ではなく,複数の光源の内で最外周にある光源の内側に位置する光源の間に配置したことにより,係止孔を基板の両端部に余分に設ける必要がなくなり,LED基板を複数並べてLED照明装置を構成した場合であっても,均一な面発光と基板の小型化を可能にしたものであり,基板を一面に複数並べて備える照明装置であるのに対し,引用例2及び4は,それぞれ光源配置基板25及びLEDモジュール1が単一であり,引用発明と引用例2及び4とでは,照明装置としての基本構成が相違するので,引用発明に引用例2に記載された「貫通孔23」及び引用例4に記載された「嵌合穴11」を組み合わせても,相違点2に係る本件発明の構成とはならない。
また,引用例3に記載された「結合ネジ15が通基板の孔」は,基板と放熱体を結合するためのものであり,引用例3には,基板を一面に係止するための係止孔がないので,引用発明に引用例3に記載された発明を組み合わせることはできない。
ウ 以上によれば,引用発明において,引用例2ないし4に記載された発明を組み合わせることにより,当業者が相違点2に係る本件発明の構成に容易に想到することができたとはいえない。 」
・審決取消訴訟での新たな証拠提出
「 ア 原告は,相違点2に係る本件発明の構成は,引用発明と甲7ないし7の2に記載された一般的な技術であるLEDを装着した基板を一面に係止するための構成を組み合わせることにより容易に想到できる旨主張する。
しかし,原告が審判手続において主張した無効理由は,「本件発明は,引用例1,引用例2ないし4及び周知技術(周知例1ないし10)に基づいて,当業者が容易
に発明できたものである。」というものであり,相違点2については,同構成が引用例2ないし4に記載されていることを主張していたものであって,引用例1に引用例2ないし4を組み合わせることによる容易想到性を主張していたものと認められる(甲10,14)。
そうすると,原告の上記主張のうち,相違点2に係る本件発明の構成がLEDを装着した基板を一面に係止するための構成として一般的な技術であることを甲7ないし7の2に基づいて主張することは,本件訴訟において,引用発明に組み合わせる新たな公知技術を引用するものにほかならないから,上記主張は採用の限りでない。 」
◆(参考)新たな証拠の提出の可否について
→ 周知技術の立証のための文献提出であれば許される。
・食品包装容器の構造事件 最高裁昭和55年1月24日判決昭和54年(行ツ)第2号
Cf. メリヤス編機事件 最高裁昭和51年3月10日判決昭和42年(行ツ)第28号
(知財高裁4部 高部裁判長 審○→判○)
(2016.1.29. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-01-29 12:28
| 特許裁判例
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