2016年 02月 21日
特許 平成27年(行ケ)10077号水洗便器事件 |
◆パナソニックvs.TOTOの無効審判の審決取消訴訟。復数の噴出口(引例)を変形して1つにして本願の構成とすることが容易であったか否かが争点となった事件。
【進歩性、動機付け、技術的思想、特許法29条2項】
「 (1) 相違点3-1の判断の誤りについて
事案にかんがみ,まず,相違点3-1の判断の誤りの有無について検討する。
原告は,甲3発明の2つの「給水路の下流の便鉢面に露出する部分」(本件訂正発明の「ボール面噴出口」に相当)を1つとして本件訂正発明の相違点3-1①に相当する構成とすることは,当業者にとって容易である旨を主張する。
甲3発明は,前記第2,3(2)イ(エ)aの認定のとおりであり,甲3の記載によれば,少ない洗浄水で洗浄面全面を効果的に洗浄できる洋風便器を提供するために…便鉢の外周縁に沿って水平面を有する通水路を設け,給水路からの洗浄水を,給水路下流の便鉢面に露出する部分から左右両側の通水路に導き,これを便鉢外周に回り込んで落ちさせるとともに,便鉢後方側に,給水路に供給された洗浄水を直接便鉢内に射出する射水孔を形成したものである(【0010】~【0012】【0029】【0030】【図9】)。
このように,甲3発明は,少ない洗浄水で洗浄面全面を効果的に洗浄するために,給水路からの洗浄水を大きくは3方向に分けているのであり,その技術思想は,洗浄水を分散させて供給するというところにあると認められるから,甲3発明に接した当業者は,甲3発明の効果を奏するためには,給水路からの洗浄水を少なくとも3方向に分散させることが必要であると理解する。そうすると,仮に,1つのボール面噴出口により渦洗浄動作を発生させる水洗便器が周知であったとしても,当業者は,他に何らかの技術課題や積極的な動機付けが認められない限り,甲3発明の給水路下流の露出部を一本にまとめようと試みることはしないといえる(なお,…)。そして,上記の技術課題等は,本件証拠上認められないから,当業者は,甲3発明の給水路下流の露出部分を減少させる構成を容易に採用できるものではなく,この結論は,一般的にボール面噴出口1つのタイプと同2つのタイプの各構成が相互に置換可能であるか否かにより左右されない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
(2) 小括
以上からすると,相違点3-1①に相当する本件訂正発明の構成とすること自体が当業者にとって容易ではないから,相違点3-1②に相当する部分が相違点を構成するか否かについて検討するまでもなく,審決の相違点3-1の判断には,誤りがないことに帰する。
したがって,取消事由5は,理由がない。 」
(知財高裁2部 清水裁判長 高:○)
◆Memo
・引例の課題/技術思想の理解。当業者であればどう考えるか。
・『積極的な動機付け』があるか?
(2016.2.21. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-02-21 22:27
| 特許裁判例
|
Comments(0)