2016年 02月 21日
特許 平成27年(行ケ)10090号 盲鋲素子拒絶審決取消訴訟 |
◆引例と周知技術の組合せにより進歩性欠如と判断した審決が知財高裁で取り消された事件。
【進歩性、特許法29条2項、動機付け】
「 (3) 周知技術を適用した場合の構成
審決は,引用発明に上記周知技術を適用することで,止め頭部を「環状降起の形の環状止め頭部」とすること,その際,引用発明の拡大溝孔6aを参酌して,「軸部にある複数の穴により」軸部壁の弱体化部を形成することは,当業者が容易に想到し得たことであると判断した。そして,被告は,これに関連して,周知技術の「変形区域」は引用発明の「複数の溝孔6が形成された領域」に相当するから,引用発明の「複数の溝孔6」に換えて,周知技術の「軸部が適当な肉厚を有することにより変形を生じる」との構成を採用することに格別の困難性はない旨主張する。
しかしながら,引用発明における「溝孔6」は,従来技術におけるスリットに相当するものであり,そのうち,「拡大溝孔6a」は,「溝孔6」と一体で,スリットの中で,特に応力的に弱い部分を形成して,スリット間の管状部材4を折り曲げやすくする役割を果たすものであると認められる。したがって,引用発明において周知技術を適用した場合に,一体である「拡大溝孔6a」と「溝孔6」の構成の一部である「拡大溝孔6a」だけを残すことは困難であり,そうすべき技術的根拠もない。そして,「溝孔6および拡大溝孔6a」をすべて残したまま軸部の肉厚を変えたとしても,変形に寄与しているのは溝孔6の存在であり,「軸部が孔のない適当な肉厚を有することにより変形を生じる」構成とは必ずしもいえないし,少なくとも,変形後に形成される止め頭部は,本願発明の前記従来技術と同様に,“コスモスの花弁”状になり,本願発明における「環状降起の形の環状止め頭部」を有する構成とならないことは明白である。
また,仮に,「溝孔6および拡大溝孔6a」をすべて交換した場合には,複数の穴を変形区域に設ける構成にならず,軸部の構造,止め頭部の形状及び軸部壁の弱体化部に関する上記相違点に係る構成に想到しないことに変わりない。 よって,引用発明に周知技術を適用しても,上記相違点に係る構成は想到できない。 」
(知財高裁2部 清水裁判長 審:×→裁:○)
◆Memo
・周知技術の適用により一見容易なものについても、主引例の構成を詳細に検討する。
・引例の具体的な構成から本願構成となるように変形することが自然といえるか?/技術的根拠。
(2016.2.19. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-02-21 23:52
| 特許裁判例
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