2016年 02月 29日
特許 平成27(行ケ)10095 内燃機関燃費削減装置事件 |
◆赤外線照射により内燃機関の燃焼効率向上を図る発明に関し、赤外線の波長を請求項記載の所定の範囲とすることが引例から容易想到か否か等が争点となった事件。拒絶審決に対する取消訴訟、請求棄却。
【動機付け、数値範囲、課題・技術分野の共通、設計的事項、有利な効果】
「 (2) 赤外線の光の波長領域について
ア 引用文献1の前記記載(段落【0017】及び【0018】)によれば,引用発明において,「波数が約3600cm -1 ~3800cm -1 附近の赤外線」(波長が約2630~2780nm附近の赤外線)を選択したのは,波数が約3600cm -1 ~3800cm -1 附近の赤外線領域は水蒸気に対して最大の吸収帯になっていて,分子振動を励起させることができ,これにより,エンジンの燃焼効率改善効果(燃費削減効果)が期待できるからであると認められる。このことは,引用文献3に…からも裏付けられる(上記図4については,別紙引用文献3図面目録参照)。
そして,水蒸気層に関する赤外線の吸収帯は,約2.4~3.4μmの波長領域だけでなく,約1.33~1.5μmの波長領域及び約1.8~2.0μmの波長領域にも存在することは,昭和57年3月3日第一版第一刷発行のJ.R.ホールマン著の「伝熱工学下」308頁にも記載されており,赤外線ないし近赤外線を用いる技術分野における技術常識であると認められる(甲3,乙1。本願明細書の図7の水(H2O)欄において,透過率が0となっている波長領域,すなわち,吸収帯となっている波長領域とも概ね一致する。)。
そうすると,エンジンの燃焼効率改善効果(燃費削減効果)を得るために,赤外線の光の波長領域について,どの吸収帯を用いるかは,当該技術常識を認知している当業者が適宜なし得る設計事項であり,引用文献1に接した当業者が,エンジンの燃焼効率改善効果(燃費削減効果)を得るために,約1.33~1.5μmの波長領域,すなわち近赤外領域の吸収帯を用いる動機付けもあると認められる。
したがって,引用発明において,「波数が約3600cm -1 ~3800cm -1 附近の赤外線」(波長が約2630~2780nm附近の赤外線)に代えて,約1.33~1.5μm(約1330~1500nm)の近赤外領域の光を用いることは,当業者が容易に想到し得るものであると認められる。 」
(知財高裁1部 設樂裁判長 審:×→裁:×)
(2016.2.29. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-02-29 12:15
| 特許裁判例
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