2016年 03月 18日
特許 平成27(行ケ)10143 体液分析装置拒絶審決取消訴訟 |
◆体液分析装置における温度検出に基づいた動作制御に関し、本願特有の技術課題があること、引例に動機付けが無いことを理由に、進歩性無しとした拒絶審決が取り消された事件。
【進歩性、特§29②、特有の技術課題、動機付け、センサ、較正、審決に現れない周知例の提出、メリヤス編機最高裁判決】
(進歩性の判断)
「 引用発明2は,上記1(2)のとおりであり,センサチップ部の外表面温度を監視することを介して試料溶液の温度を制御し,試料溶液の分析時に求められる温度(実施例では37.5℃)に一定化するものである。そして,引用例2には,較正プロセスについての記載も,冷蔵保存していた場合の問題点の記載もない。そうすると,引用発明の較正プロセスに引用発明2の温度制御システムを適用することが,直ちには動機付けられるとはいえない。
また,仮に,引用発明の較正プロセスに引用発明2の温度制御システムを適用することが容易であるとしても,引用発明に引用発明2を組み合わせたものは,常に分析時に求められる試料溶液の温度に一定化するとの構成しか有しておらず,センサ部の温度が所定の温度より低い場合にセンサ部を予熱するという相違点2に係る本願発明の構成には至らない。
しかも,本願発明においては,予熱する場合(常温より低い場合)と予熱しない場合(常温の場合)とのいずれかが選択される以上,当然,予熱しなくてもいい場合(常温の場合)があることが前提であり,冷蔵保存していたものを常温に戻すとの課題を認識しなければ,このような構成をとることは通常あり得ない。したがって,温度が所定の温度より低い場合には予熱し,高い場合には予熱しないことは,引用発明等に開示されていない,特有の技術課題である。 」
(特許庁が審決取消訴訟になってはじめて提出した文献について)
「 なお,被告は,当審において,引用発明2に加えて周知例(乙2~7)を提出し,較正に先立って予熱を行う態様が周知である旨の主張立証をするが,実質的に審決が全く取り上げていない周知技術を新たに追加するものであって,許されない。しかも,上記各文献からは,センサ部の温度にかかわらず較正前に自動的に一定時間の予熱を行う態様のものしか認められず,センサ部の温度によって較正前に予熱を行うかどうかを選択する態様のものが周知の技術であったとは認めるに足りない。 」
(知財高裁2部清水裁判長 審:×→裁:○)
◆Memo
・構成自体は共通するようなものであっても、センサを用いた制御の細かい相違点。
・特有の課題(ex.冷凍を常温に戻す際に生じる課題)の考慮。引例に開示のない課題。
・課題を認識していない以上、採用することがあり得ないような構造、形状、制御etc。
・「周知技術」についても、やや抽象的な技術内容ではなく、本願と同様レベルまで具体化した技術内容。
(2016.3.18. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-03-18 19:27
| 特許裁判例
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