2016年 03月 31日
特許 平成27年(行ケ)第10094号ロータリー作業機シールドカバー事件 |
◆無効審判で進歩性無しと判断した審決が、阻害要因等の存在を認めて知財高裁で取り消された事件。
【進歩性、特§29②、阻害要因、反目的、課題解決できなくなる変更、論理付けの2段ステップ(容易の容易)、格別な努力が必要】
(容易想到性の判断)
「…引用例2の…記載に照らすと,リヤカバーに固着された土付着防止部材(弾性部材)を自重で垂れ下がるように構成すると,リヤカバーの枢着部分では,メインカーに取り付けた低摩擦係数の部材と,リヤカバーに取り付けた弾性部材との接合部に間隙が生じるため,ここに土がたまりやすくなるという引用発明2の課題を解決できない。したがって,引用発明2の弾性部材23について端部寄りの部分が自重で垂れ下がるような材質のものに変更することは,引用発明2の目的に反する。特に,引用発明2で,リヤカバー13を下降させた状態において,既に前方側の端部寄りの部分が自重で垂れ下がるような弾性部材23を用いた場合,リヤカバー13を上方へ回動させると,弾性部材23の垂れ下がり位置はリヤカバー下降時よりさらに下方になるため,リヤカバーの枢着部分では,メインカバーに取り付けた低摩擦係数の部材と,リヤカバーに取り付けた弾性部材との接合部にさらに間隙が生じ,ここに土がたまりやすくなってしまい,飛散した土の侵入防止という引用発明2の上記作用効果を奏することができない。そのため,上記作用効果を奏するためには,リヤカバー13を下降させた状態において,既に前方側の端部寄りの部分が自重で垂れ下がるような弾性部材23を用いることはできない。
そうすると,引用発明2において,弾性部材23の前方側の端部寄りの部分を自重で垂れ下がるようにすることには,そもそも阻害要因があると認められる。弾性部材23の前端部23aを更に前方に延設して低摩擦係数の部材14と重ね合わせた状態にした場合も,同様の理が妥当することから,前端部23aを前方に延設した弾性部材23の前方側の端部寄りの部分が自重で垂れ下がるようにすることは,当業者が適宜になし得る程度のものということはできない。
したがって,本件審決の上記判断は,誤りというべきである。 」
(論理付けの2段ステップについて)
「 (ア) しかし,引用発明2の弾性部材23の前端部23aが前方に延設された(前方)端部寄りの部分を自重で垂れ下がるものとすることを想到した上で,これを引用発明1に適用することによって,引用発明1の後部カバー13に引用発明2の弾性部材23として設けられた土付着防止部材20の進行方向前方側の端部寄りの部分を自重で垂れ下がるものとするというのは,引用発明1を基準にして,更に引用発明2から容易に想到し得た技術を適用することが容易か否かを問題にすることになる。このように,引用発明1に基づいて,2つの段階を経て相違点に係る本件発明1の構成に想到することは,格別な努力が必要であり,当業者にとって容易であるということはできない。 」
(知財高裁4部高部裁判長 審:×→裁:◯)
◆Memo:
・論理付の2段階ステップについて言及。
(2016.3.31. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-03-31 12:16
| 特許裁判例
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