2016年 04月 01日
特許 平成27年(行ケ)10156号 書画カメラ無効審判控訴審 |
◆「操作部」を設ける位置について容易想到性が問題となった事件。知財高裁でも容易想到ではないと判断。
【進歩性、動機付け、効果を奏しなくなる変更、(阻害要因)、開示示唆、書画カメラ、OHP、プロジェクタ】
「 (2) 操作部をアタッチメント11の上面に設ける構成の容易想到性について
原告は,アタッチメント11の取付台12には,電源供給及び信号処理の回路が設けられており,板状にすぎないビデオカメラ支持部33とは異なり,上面に操作部35を設けることが可能なボックス形状を有していること,アーム40を折り畳んだ非使用状態ではアーム40が操作部35に重なるため,操作部35を操作できない不都合や,正面から操作できない不都合を解消するために,ビデオカメラ支持部33と一体のアタッチメント11の取付台12の上面に操作部35を設け,アーム40を折り畳んだ状態でも操作部35を操作できるように構成することは当業者なら容易に想到し得る旨主張する。
しかし,甲1’発明は,前記(1)に認定したとおりのものであり,アタッチメント1を取り付ける場合とアタッチメント11を取り付けない場合の両方の場合を想定した発明であり,ビデオカメラ支持部33を有する書画カメラ部31をアタッチメント11やプロジェクタ本体から着脱可能なようにしたことで,書画カメラ部31を有効活用でき,ユーザに好ましい印象を与えることができるものである。そうすると,甲1’発明の操作部35は,アタッチメント11を取り付ける場合及びアタッチメント11を取り付けない場合に共通に使用されるものであるから,書画カメラ装置を操作する上で必須である。このため,甲1’発明において,操作部35を設ける場所を,書画カメラ部31の回路収納部34の上面からアタッチメント11の上面に変更すると,アタッチメント11を取り付けない場合,書画カメラ装置は操作部35を具備しない構成となって,書画カメラ装置の操作ができなくなり,書画カメラ部31を着脱可能なようにしたことで有効活用し,ユーザに好ましい印象を与えるとの効果を奏しないこととなる。
そうすると,当業者は,甲1’発明において,他に何らの示唆もなく,操作部をアタッチメント11の上面に設けようと動機付けられることはない。
(3) 小括
したがって,アタッチメント11の取付台12に操作部35を設けることは,当業者にとって容易に想到し得ることとはいえないから,本件発明1は,本件原出願時,当業者が,甲1発明及び甲3ないし7発明から容易に発明をすることができたとはいえない。 」
エルモvs.セイコーエプソン
(知財高裁2部清水裁判長 審:◯→裁:◯)
◆Memo
・機械構造系の発明で、所定の機能部(本件の「操作部」)を装置中の適当な位置に配置することは一見容易。引例の具体的な課題/目的/作用効果を検討→ 作用効果不功奏となるような変更であれば、この点主張。
(2016.4.1. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-04-01 18:39
| 特許裁判例
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