2016年 04月 05日
特許 平成27年(行ケ)10165号5角柱状ストレッチ枕拒絶審決取消訴訟事件 |
◆断面八角形の枕(転がりやすい)が公知であったとしても、断面5角形の本件ストレッチ枕は容易想到ではないと判断された事件。拒絶審決取消。
【進歩性、特§29②、動機付け、多角形、八角形、五角形、引例の目的、目的から離れるような変更、相応の創意、五角であることの特別の技術的意義、(選択発明)】
「 しかしながら,前記1(2)に認定のとおり,引用発明の転がり枕は,容易に転がして体の任意の部分にあてがうことができ,また,その部位をわずかに上げて転がすことであてがい直しができるとするものであり,引用例にも,「円形状若しくは多角形状の外周をもつ転がり容易な円柱形状の弾性体枕」(【請求項1】),「多角形状の外周面をもつ転がし容易な円柱形状の丸型枕」(【0004】【課題を解決するための手段】),「本発明の円柱形状に形成された転がり枕」(【0009】【発明の効果】)との記載があることにかんがみると,引用発明の転がり枕の外周面は,円に近い形状の多角形が想定されているものと認められる(審決は,引用例【0005】【0007】の記載から,引用発明について「多角形の転がり易い形状」と認定したものと解されるが,十分に正確なものとはいえない。)。そして,多角形は,角の数が増えるほど円に近い形状となるから,そのような断面形状を有する物が転がりやすくなり,逆に,角の数が減るほど円から離れた形状となり転がりにくくなることは自明である。そうであれば,引用例に接した当業者は,具体的に開示された8角形よりも角の数の多い多角形状の外周面を持つ形状とすることを通常試みるとはいえるものの,これよりも角の数の少ない多角形状の外周面を持つ形状とすることは,引用発明の目的から離れていくことであって,これを試みること自体に相応の創意を要する。
他方,本願発明は,本願明細書に「正5角柱体枕の形状や傾斜度は、他の角柱体」や円柱体に比べて,人間が仰臥,横臥の姿勢で行う,こすり付けや引っ掛け等のストレッチ運動において,そのし易さ,安定度等の点で非常に優れている…例えば,…,3角柱体は,急斜面過ぎて使い難い。7角以上の柱体では,一辺の長さが5角柱体に比べ小さく,転がり易く不安定」であり,「又,頭との接触幅が小さいので感触も劣る。」(【0011】)と記載されているとおり,5角柱体に格別の技術的意義を見出したものである。
このように,枕を5角柱体とすることに格別の技術的意義を見出した本願発明に対し,枕の断面形状を5角形とすることが周知技術とはいえず,また,多角形状の枕である引用発明は,「転がり容易」なことを目的とするものである。
そうすると,引用発明において,「多角形状の外周面をもつ転がし容易な形状」を「5角柱体状」とすることは,当業者が容易に想到し得る事項ではないと認められる。 」
(知財高裁2部清水裁判長 審:×→裁:◯)
◆Memo
・「多角形」の開示がある中で「五角形」に限定することは一見容易、but 引例の目的に反する方向の変更の場合には必ずしも容易とは言えない。
・三角形、四角形、六角形を積極的に本願発明から排除することで(明細書)、五角形であることの技術的意義の格別性を高める。
・権利範囲を欲張らずピンポイントでの効果主張で、厳しそうな内容でも、権利化できる可能性。
(2016.4.5. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-04-05 18:48
| 特許裁判例
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