2016年 05月 02日
商標 平成27年(行ケ)10179号 MFX不使用取消審判控訴審 |
◆ボイラ集中管理ソフトのバージョンアップ版が格納されたCD-ROMがそれ自体独立した商品として観念できるものか否か等が争点となった事件。独立した商品として観念できる。
【不使用取消審判、商§50、付属品、ソフトウェア、バージョンアップ、独立商取引の対象、使用商標、要部、社会通念上同一、結合商標】
(使用商品について)
「3 被告が本件使用商標を本件審判請求の対象となった指定商品について使用したか
前記1(3)によれば,被告は,…本件使用商標が表示された本件ソフトウェアのバージョンアップ版が格納されたCD-ROMを引き渡したことが認められる。
かかる行為をもって,本件商標と社会通念上同一の商標を,本件審判請求の対象となった指定商品に含まれる「電子計算機用プログラム」について使用したということができるかどうかについて,以下検討する。
(1) 本件集中管理装置と本件ソフトウェアの関係について
・・・(略)・・・
イ そうすると,本件集中管理装置の機能,性能は,専ら本件ソフトウェアの機能,性能に依存しているものであって,むしろ,その本質はソフトウェアである本件ソフトウェアにあるということも可能である。そして,本件集中管理装置を最新機器に対応させるためには,少なくとも本件ソフトウェアのバージョンアップが必要であり,この場合には,本件集中管理装置が所要の機能を果たすための必須の構成要素である本件ソフトウェアのバージョンアップ版が格納されたCD-ROMが顧客に販売されるから,かかるバージョンアップ版を対象とする独立の取引を観念することができる。
以上によれば,本件ソフトウェアのバージョンアップ版は,本件集中管理装置の単なる付属品ではなく,それ自体を独立した商品として観念することができるというべきである。・・・(略)・・・
…本件ソフトウェアのバージョンアップ版が,本件集中管理装置に所要の機能を付与するための専用のアプリケーションソフトウェアをバージョンアップさせるためのものであり,商標法施行規則別表第9類の「十六 電子応用機械器具及びその部品」中の「電子計算機用プログラム」に当たることは明らかである。 」
(使用商標について)
「…「MFX」の文字部分と「EVシリーズ」の文字部分は,「-」(ハイフン)によって接続されているのに対し,本件使用商標を構成する文字の大きさには特段の差異はなく,また,上記ハイフン部分を除く各文字の間隔にも特段の差異はないから,上記ハイフンの前にある「MFX」の文字部分は,上記ハイフンの後の文字部分と対比して,外観上まとまったものとして看取されるというべきである。
これに対し,上記ハイフンの後の「EVシリーズ」の文字部分は,「EV」の文字部分それ自体には,出所識別標識としての特段の称呼や観念を生ずるものではなく,むしろ,「連続性を持つ一連のもの」との意味を有する日本語であることを容易に理解することができる「シリーズ」の文字部分がその後ろに付されていることや,電子応用機械器具の取引分野においては,それ自体としては必ずしも固有の意味を生じるものとはいえない欧文字等の組合せを,商品の種別や型番を表す記号として用いることがあることからすると,取引者,需要者において,「MFX」の語によって表象される一連の製品における個々の製品の種別や型番を表す語と理解することができるというべきである。
イ 以上を総合すると,本件使用商標の「MFX」の文字部分は,本件使用商標のその余の文字部分から分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではなく,むしろ,電子応用機械器具の取引者,需要者において,被告が製造販売する製品を表すひとまとまりの表示として認識するものと認められ,また,本件使用商標のその余の文字部分からは,出所識別標識としての称呼や観念は生じないから,「MFX」の文字部分が独立して自他商品の識別標識として機能し得るものであると認められる。
したがって,「MFX」の文字部分は,本件使用商標の要部であると認められ,本件商標は,これと同一の文字からなるものであるから,本件使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標であると認められる。 」
(知財高裁3部鶴岡裁判長)
(2016.5.2. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-05-02 17:32
| 商標
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