2016年 05月 10日
特許 平成27年(行ケ)10205号 車両ルーフアンテナ無効審判審決取消訴訟 |
◆2つの引用文献を組み合わせて本願の構成に想到することが容易であったか否か等が争点となった事件。容易想到でない。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/864/085864_hanrei.pdf
「そうすると,甲1発明と甲8発明は,ともに車両のルーフに設置するアンテナであって,その形状も同様に流線型であるといえるから,当業者であれば,甲1発明の魚鰭式アンテナ装置を車両のルーフに装着する手段として,車両のルーフとの接合面である「金属ベース」を螺子止めすることに代えて,より簡便な甲8発明の両面テープを採用しようと試みる可能性はあるといえる。 しかし,仮に,甲1発明の魚鰭式アンテナ装置と車両のルーフトップとを両面テープを使用して装着する場合,甲1発明の魚鰭式アンテナ装置は,「魚鰭状カバー」の底面開口の周縁部の下に「金属ベース」が配置されているから,「金属ベース」が接合面となり,「魚鰭状カバー」の底面開口の周縁部が接合面となることはない。 そして,甲1発明は,「自動車のルーフトップに取り付け可能で,ルーフトップに新規な美観を与えるのみならず,ラジオの無線電波周波数信号受信能力を高められる」(甲1文献【0004】)魚鰭式アンテナ装置を提供することを課題とする発明であるから,甲1発明の魚鰭式アンテナ装置とルーフトップとを両面テープで装着する場合,当業者であれば,甲1発明の課題を解決するために必須の構成である「金属ベース」を除外ないし改変することにより,「魚鰭状カバー」の底面開口の周縁部を露出させて接合面とすることは想定し難く,むしろ,「金属ベース」のルーフトップ側の面を接合面として装着しようとするのが自然であるといえる。 また,甲1文献には,「金属ベース」や「魚鰭状カバー」の大きさを変更するなどして,「魚鰭状カバー」の底面開口の周縁部を露出させて接合面とする構成については記載も示唆もされておらず,その他,原告が甲1発明との相違点2に係る本件発明1の構成に至ることを理由付ける根拠となる技術として提出する公知文献によっても,上記構成とすることが,本件特許の出願時における当業者の周知技術であったとも認められない。 したがって,甲1発明において,相違点2に係る構成を採用することは,当業者であっても容易に想到し得たということはできない。 」 (知財高裁1部設樂裁判長 審:◯→裁:◯)
【進歩性、組合せ、課題解決のための必須の構成を除去/改変、動機付け、ネジ止め、両面テープ】
◆Memo
・引用文献の課題に鑑みたときにそのような変更/改変/除去をするかどうかという視点。
・必須の構成を敢えて変更するか?
(2016.5.10. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-05-10 18:19
| 特許裁判例
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