◆耳ユニット装置の発明に関し、引用文献1、2の組合せから進歩性欠如と判断した審決が知財高裁でも維持された事件。
【進歩性、動機付け、阻害要因、顕著な効果、独立の技術的事項、動機付けの妨げ】
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/861/085861_hanrei.pdf
「 (3) 動機付けの欠如に対して 原告は,外耳道が周囲に開放された状態にはならない引用発明2に係る引用例2技術事項を,外耳道がある程度は周囲に開放された状態となることを可能にしている引用発明に適用する動機付けはないと主張する。 しかしながら,前記1(2)のとおり,引用発明2のデバイスは,突起3が対耳輪にはめこまれるとともに突起4が耳珠及び対珠により受け入れられることにより固定されるものであり,外耳道は固定にかかわらないから(それゆえに,引用例2技術事項について「外耳道にはめ込む部分がなく」との認定がされている。),引用発明2に溝7を設けてデバイスを耳甲介に密着させるための構成に,外耳道は関係しないことになる。そうすると,外耳道が周囲に開放されていることと引用発明2技術事項とは,それぞれが独立の技術事項であるといえるから,仮に,引用発明2において外道が開放された状態にならないとしても,引用発明に引用発明2技術事項を適用する動機付けの妨げにはならないと認められる。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 (4) 阻害事由について 原告は,耳輪根との干渉を避けるようにしたとの原告主張技術事項を,耳甲介にある凸部と積極的に接触面を提供するようにすることには阻害要因があると主張する。 しかしながら,上記(1)のとおり,引用例2から原告主張技術事項の上記原告主張部分を認めることはできないから,原告の上記主張は前提を欠き,失当である。 (5) 顕著な作用効果の看過 ① 原告は,耳輪根に対する接触面を積極的に提供する本願補正発明の凹状の湾曲部の構成は,引用発明2にはない顕著な作用効果を奏すると主張する。 顕著な作用効果は,引用発明が相違点に係る構成を備えた結果が,当業者において想定する範囲を超える作用効果を生じさせるものであるかを問題とするものであるから,単に本願補正発明が引用発明2にはない作用効果を奏したからといって,直ちに顕著な作用効果を奏するとはいえない。もっとも,上記(1)のとおり,本願補正発明の凹状の湾曲部が耳輪根に対する接触面を積極的に提供するというのは,本願補正発明の特許請求の範囲又は本願明細書に基づかない主張であるから,原告の上記主張は前提を欠き,失当である。 」(知財高裁2部清水裁判長 審:×→判:×)
◆Memo・ 動機付けの欠如/阻害事由/顕著な作用効果の看過 のように項目立てして判示。・『顕著な効果』の意味合い(2016.5.12. 弁理士 鈴木学)