2016年 05月 13日
特許 平成27年(行ケ)10122号 皮膚科学的治療のためのシステム事件 |
◆引用例2の認定の誤り、および、引用例の組合せによっても本願発明の構成に到らないこと等を理由に、拒絶審決が取り消された事件。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/871/085871_hanrei.pdf
「 以上のとおり,液体水フィルターは,皮膚を冷却するものということはできない。 したがって,本件審決が認定した引用発明2(前記第2の3⑷)のうち,「患者の皮膚の処置のため,ランプからの光を導波管を通じて患者の皮膚へ向けるための装置において,光スペクトルのフィルター処理を行なうためにフィルター6を設け,フィルター6を液体水フィルターと」することは認定できるが,「この水を(皮膚の)冷却用にも使用すること」までは認定することができない。 ⑵ 引用発明1に引用例2に記載された発明を適用することについて 引用例2に記載された発明は,「患者の皮膚の処置のため,ランプからの光を導波管を通じて患者の皮膚へ向けるための装置において,光スペクトルのフィルター処理を行なうためにフィルター6を設け,フィルター6を液体水フィルターとすること」であり,この液体水フィルターの水を皮膚の冷却用に使用することは,認められず,したがって,仮に引用発明1の「プリズム6及びプリズム6の側面のコーティングからなる光学的フィルター」を引用例2に記載された液体水フィルターに替えたとしても,光学的フィルターが生物組織を冷却するという相違点に係る本願発明の構成に至らない。 」
(被告の主張 設計事項?) 「 被告は,…引用発明2のフィルター6を液体水フィルターとした場合,当業者であれば,液体水フィルターによって患者の皮膚を冷却する効果を実現するために必要な設計変更を行うことは可能である旨主張する。 この点に関し,引用例2において,液体水フィルターについては,「厚さ1~3mmの液体水フィルターが使用され得」ると記載されており(【0077】),前記⑴ウ(ウ)のとおり,そのように薄く広げられた水が導波管の冷却を介して皮膚を冷却する効果をもたらすとは必ずしもいい難い。しかし,水に入射した光の透過率は水の層が厚くなるほど低下することに鑑みると,上記厚さは,皮膚の美容及び医療の皮膚科学処置という装置Dの目的(【0019】)を達成するのに必要な光の量を確保する観点から定められたものとみることができるから,皮膚を冷却するために液体水フィルターをより厚いものにすると,光の透過率が低下し,上記目的を達成する装置Dの機能を損なう結果になる。よって,当業者において,原告主張に係る設計変更を行うことが可能であると直ちにいうことはできない。 」 (知財高裁4部高部裁判長) (2016.5.13. 弁理士 鈴木学)
【引用発明の認定、設計的事項、引用例に記載の無い機能(ex.冷却機能)まで認定できるか、引用例の目的/機能に反するような改変】
by manabu16779
| 2016-05-13 18:57
| 特許裁判例
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