2016年 10月 25日
特許 平成28年(ネ)10047号 電気コネクタ侵害訴訟 |
◆電気コネクタの特許権侵害が認められた件。損害額3185万円。知財高裁でも侵害/無効理由無しと判断。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/880/085880_hanrei.pdf
(進歩性の無効理由の部分抜粋) 「…ロック突部の突部後縁の最後方位置につき,コネクタ嵌合過程と嵌合終了時点における前後方向の位置の変化や,嵌合終了時点におけるロック溝部の突出部の最前方位置との前後関係について記載ないし示唆するものではない。 また,そもそも前記(ア)eのとおり,乙3発明においては,円滑な回転動作のために「回転中心突起53」の断面として円形ないしそれに近い形状が想定されているところ,これを,乙7ないし10に記載された,コネクタにおいて嵌合操作の支点となる突部を多角形状としたものに変更すべき動機付けはなく,むしろ回転中心突起の断面を多角形状のものにすると円滑な回転動作が妨げられることからすれば,このような変更については阻害要因があるというべきである。 以上のとおり,乙3発明における「回転中心突起」の断面形状につき,乙7ないし10を適用して多角形状にすることには阻害要因がある上,仮にこれを適用したとしても,ロック突部の突部後縁の最後方位置につき,コネクタ嵌合過程と嵌合終了時点における前後方向の位置の変化や,嵌合終了時点におけるロック溝部の突出部の最前方位置との前後関係について記載ないし示唆のない乙7ないし10を適用することによって本件特許発明2に想到することは容易ではないというべきであり,本件特許発明2は進歩性を有するものである。」
(損害額) 「3 争点(3)(原告の損害額)について (1) 証拠(乙22)によれば,被告による被告製品(より正確には被告製品を構成する各部品)の売上高(平成25年9月13日から平成27年8月末日まで)は合計1億0617万4127円であることが認められる。そして,原告は,被告製品の販売に伴う被告の限界利益率は少なくとも30%であると主張しており,被告はこれを争いつつ,具体的な限界利益率を主張立証しないため,原告が主張する被告の限界利益率を採用することとすると,被告製品の販売に伴う被告の利益額は合計3185万2238円となるから,特許法102条2項により,これを原告の損害額と推定する。」 (東京地裁47部沖中裁判長)
◆Memo: ・特許法102条2項の推定規定。 (2016.5.23. 弁理士 鈴木学) (2016.10.25. 追記)
【侵害訴訟、技術的範囲、実施可能要件、サポート要件、明確性要件、進歩性、阻害要因、損害賠償、差止、廃棄】
(特§102②適用には「実施」が必要?)
「
3 争点(3)(損害額)について (1) 当裁判所も,被控訴人の本件特許権2の侵害による損害賠償請求は,控訴人に対し,3185万2238円及びうち883万5431円に対する平成26年6月27日から,うち2301万6807円に対する平成27年9月1日から,各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるものと判断する。 …略…
(2) 当審における控訴人の主張について
ア 控訴人は,①実質的にみても,被控訴人は,自ら本件特許発明2を実施しているとはいえず,②被告製品と被控訴人の製品(DF57,DF61シリーズ)とは競合関係になく,③被告製品の販売によって,被控訴人の製品の売上げに何ら影響がなかったことからして,「特許権者に侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情」が存在しないから,特許法102条2項を適用することはできない旨主張する。
(ア) 特許法102条2項を適用するに当たり,特許権者が当該特許発明を実施していることは,同項を適用するための要件ではなく,特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には,同項の適用が認められると解すべきである。 」
(知財高裁4部高部判事)
◆東京地裁 平成26年(ワ)14006号
by manabu16779
| 2016-10-25 20:32
| 特許裁判例
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