2016年 06月 15日
特許 平成25年(ワ)33070号 農産物の選別装置侵害訴訟 |
◆農作物の選別装置に関する特許権侵害が認定され、約8700万円の損害賠償が認められた事件。
【特§70、技術的範囲、無効の抗弁、進歩性、動機付け、損害額、特§102、寄与率、損害額推定、覆滅の事情】
(クレームの「所定の~」の解釈として、予め固定的に設定されるものに限定され、動的に設定されるものは含まないか?)
「…被告が,構成要件1Bの「所定の」及び1Dの「該当する」とは各仕分ラインへの仕分区分があらかじめ固定的に設定されていることをいい,動的に変更されるものを含まない旨主張するのに対し,原告は排出先となる仕分ラインが排出の時点において特定されていれば「所定の」及び「該当する」に当たる旨主張するので,以下,検討する。
イ まず,本件発明1に係る特許請求の範囲の記載をみると,構成要件1Bとして「計測軌道上で計測された仕分け情報に基づいて個々の受皿上の農産物を排出するように所定の仕分区分別の仕分ラインが多数分岐接続されている……仕分排出軌道領域」が設定される旨記載され,「仕分け情報に基づいて……排出するように」が「所定の……仕分ライン」を修飾していることに照らすと,「仕分ライン」は農産物が載置された個々の受皿の排出先であり,農産物の仕分区分別に設けられるもので,仕分け情報に基づいて上記受皿が排出できるものであることを意味するものと解される。また,受皿の排出先を決めるに当たっては,計測軌道上で計測された仕分け情報に基くとされるが,それ以外の情報,例えば,排出時にプールコンベアに存在する受皿に関する情報を考慮することは排除されていない。そして,一般に「所定」とは「定まっていること」(乙25)といった意味を有する用語である。そうすると,構成要件1Bの「所定の」とは,仕分け情報に基づいて上記受皿の排出先が決まるように仕分ラインが定まっていることを意味するものと解される。
また,同1Dにつき特許請求の範囲には「仕分排出軌道領域の上流に設けた読出し手段により個々の受皿の農産物仕分け情報を読出して該当する仕分区分の仕分ラインに該受皿を排出する」と記載されているところ,「該当する」は「一定の条件等に当てはまること」といった意味を有する用語である。そして,「読出し手段により……農産物仕分け情報を読出して」に引き続いて「該当する……仕分ライン」と記載されていることに照らすと,構成要件1Dにいう「該当する」とは,ある受皿の農産物仕分け情報を読み出した結果,その受皿がいずれか一つの仕分区分に当てはまることを意味するものと解される。
以上によれば,「所定の」及び「該当する」については,個々の受皿の仕分け情報を読み出した後に排出先が決定される時点でその受皿が排出されるべき仕分ラインが定まっていればよく,あらかじめ固定的に設定されていなくてもよいと解するのが相当である。 」
シブヤ精機vs近江度量衡
(東京地裁46部 長谷川裁判長、平成28年5月26日)
(2016.6.15. 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-06-15 13:08
| 特許裁判例
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