2016年 07月 04日
特許 平成27年(ワ)12609号 脱毛症治療薬事件 |
◆脱毛症治療薬の発明の進歩性等が問題となった事件(特許無効の抗弁、特§104の3)。進歩性無し、権利行使制限。
【進歩性、特許法29条2項、アンドロゲン脱毛、格別の効果(↔予測の範囲内)】
(容易想到性、有利な効果)
「… (4) 相違点1について検討するに,引用発明は,経口投与されるものであるところ,これを「経口剤型」の「組成物」とすることに,当業者が困難を要するものではない。そして,引用発明のフィナステライドは,周知の医薬であるので,これを含有する組成物は「医薬組成物」に他ならない。そうすると,引用発明を「経口剤型医薬組成物」とすることは,本件優先日当時,当業者が容易になし得たものといえる。 …略…
(6) 相違点3について検討するに,本件訂正発明に係る技術分野において,治療効果の向上や副作用の低減等を目的として,安全且つ有効な医薬の投与量を検討してみることは当業者が適宜行うことにすぎないから,本件訂正発明において規定されるような単位用量を設定することは,本件優先日当時,当業者が容易になし得たものといえるし,少なくとも,引用例2ないし同5において示された1mg前後あるいはより少量の投与量を参考にしつつ,治療効果の向上や副作用の低減等を目的として,安全且つ有効な医薬の投与量を検討し,本件訂正発明1において規定される程度の単位用量を設定することは,当業者が容易になし得たものといえる。
(7) 本件訂正発明の効果について検討するに,本件明細書において実施例について記載された効果は,本件優先日当時,当業者の予測し得る程度のものと判断するのが相当であり,本件訂正発明において,当業者の予測を超えるような格別に顕著な効果が生じるものと解することはできない。
(8) したがって,本件訂正発明は,本件優先日当時,引用発明(少なくとも,引用発明及び引用例2発明ないし引用例5発明)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない(進歩性を欠く)というべきである。 」
メルク・シャープ・アンド・ドームvs. ファイザー
(東京地裁29部 嶋末裁判長)
(2016.7.4. 弁理士 鈴木学)
by manabu16779
| 2016-07-04 19:56
| 特許裁判例
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